第百二十八話 人は強くなってもその三
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「本当にね」
「そうだったのね」
「だからね」
それでというのだ。
「その夢もあって」
「それでなのね」
「羆が怖くてね」
「仕方なかったのね」
「そうだったのよ」
「成程ね、しかしね」
ここまで話を聞いてだ、留奈は言った。
「確かに猛獣だけれど」
「相当餓えてないとね」
「人襲わないわね」
「変に食べものあげたりしないと人に近寄って来ないしね」
基本人の食べものを与えたり山に捨てたままにして食べる様にしてはいけない、そうすると味を覚えて欲しがるからだ。
「それに雑食で基本はね」
「木の実とか食べるのよね」
「そっちの方が多いから」
このことは他の熊も同じである。
「あの事件だってね」
「三毛別の」
「あまりにも身体が大きくて」
その為にというのだ。
「冬眠出来なくて」
「それが出来る穴がなかったの」
「それでおかしくなってね」
熊は冬眠出来ないと精神に異常をきたすのだ、これは冬眠の間にじっくりと寝て睡眠を摂り身体も頭も休めるからだ。
「ああしたことになったのよ」
「そうなのね」
「元々人を襲う熊だったかっていうと」
「違ったのね」
「そうじゃなかったかもね」
「そうなのね」
「おかしくなって」
冬眠し損ねてだ。
「冬だから食べものもなくて」
「餓えていて」
「それでね」
「ああしたことやったのね」
「大体人が集まっているところにね」
それが例え小さな開拓村であってもだ。
「家族が幾つも集まってる様な」
「そんなところになの」
「熊は来ないから」
「それで来るって」
「もうね」
そもそもというのだ。
「それ自体がね」
「おかしいのね」
「そのことがわかったのは」
それはというと。
「こっちに来てからよ」
「八条学園に入ってからなの」
「中学生からこっちだけれどね」
「あんたはそうよね」
「それから知ったのよ」
「羆のことを」
「それまでずっと怖かったのよ」
そうであったというのだ。
「本当にね」
「そうだったのね」
「そう、ただ今も怖いものあるわ」
「何よ、今は」
「地震よ」
顔を顰めさせて言った。
「それに台風に津波ね」
「災害が怖いのね」
「北海道でもあったでしょ」
「地震が」
「地震は戦争より怖いよ」
こうも言ったのだった。
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