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第百二十八話 人は強くなってもその一

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               第百二十八話  人は強くなっても
 留奈は自分が出場する競技の待機場に入った、すると体育委員である今は普通科にいる中等部の頃仲のよかった娘から言われた。
「頑張ってね」
「有り難う、実際に頑張るわね」
「そうしてね、あとね」
「あと?」
「怪我はしないでね」
 留奈にこうも言ったのだった。
「いいわね」
「怪我ね」
「だから事前に準備体操して」
 そうしてというのだ。
「体ほぐして温めてね」
「それは忘れたら駄目よね」
「それだけでね」
 準備体操をするだけでというのだ。
「全く違うから」
「やっておかないとね」
「まあここは暖かいけれどね」
「そう?」
「北海道と比べたらね」
 留奈に笑って話した。
「神戸もね」
「ああ、あんた北海道出身だから」
「札幌よ」
「札幌も寒いわね」
「神戸も冬寒いっていうけれど」
「北海道と比べたら」
「もうね」
 それこそというのだ。
「全く違うよ」
「そうよね」
「冬なんてね」
 北海道のそれはというのだ。
「雪は凄いしお水だって」
「すぐに凍って」
「厚着しないとね」
 そうでなければというのだ。
「とてもよ」
「やっていけないわね」
「ええ、あとね」
「あと?」
「ヒグマいないし」
 この生きもののことも言うのだった。
「いいわよ」
「ヒグマね」
「これが怖くてね」 
 真顔で話すのだった。
「大惨事もあったから」
「羆嵐?」
「三毛別のね」
「かなりの人が死んだのよね」
「一匹の大きな羆のせいで」
 この事件のことも話すのだった。
「何人もね」
「犠牲になって」
「大騒ぎになって」
 そうしてというのだ。
「軍隊だって出て」
「大変だったのよね」
「子供の頃このお話聞いて」 
「怖かったわよね、私もね」
 留奈は北海道の娘に話した。
「羆いるから北海道にはね」
「行きたくなかったのね」
「怖くてね」
「私はその北海道にいたのよ」
「札幌だと出ないでしょ、羆も」
「流石にそうだけれど」 
 それでもというのだ。
「ちょっと山に行くとね」
「いるから」
「もう山に行くのがね」
 それがというのだ。
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