第7話:適度な恐怖心が足りない……
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イナオリ・ネッジー。
この少年は強運の男だった。
事の発端は、故郷の村の近くの洞窟に興味本位で入って、そこで手に入れた粉を持ち帰った事だった。
この粉は火を点けるとポンと破裂する事から『炭酸粉』と名付けた。
最初の内は少量の炭酸粉を破裂させて驚かす程度の悪戯を繰り返していたが、ある日、炭酸粉が破裂した衝撃で小石が勢いよく飛んだのを観て、とんでもない事を思いついてしまった。
「炭酸粉を使ったら、大きい投石器をもっと小さく出来るんカモ?」
そう思ったが吉日とばかりに炭酸粉を使った石飛ばし実権を繰り返し、その結果、投石器の小型化に成功。豊臣秀吉がかつて居た世界で言うところの『鉄砲』や『大筒』を完成させた。
だが、直ぐには売れなかった……
その原因は二大強大大国、ムソーウ王国とマッホーウ法国が強大過ぎて一騎当千による突撃が最強の戦術と言う常識が根付いてしまったからである。
故に、遠くから石や鉄を飛ばすだけの鉄砲や大筒の有効性を伝える新たなる戦術を提示する必要が有った。
その時、行商達がクマに襲われる事件が多発した。
被害者である行商達にとっては凶災だが、イナオリにとっては吉兆だった。
先ずは、逃げ切った行商と死亡した行商の差を分析した。
すると、逃げ切った行商には荷物の奪還を早々に諦めたと言う共通点がある事を発見し、この分析が『執着心を逆撫ですれば敵を誘き寄せられる』と言う結論をイナオリに与え、これが後に接待戦法『クーデタードア』へと発展する。
次に、加害熊との戦いで鉄砲や大筒のを立証し、後にエイジオブ帝国となる弱小小国の目に留まり、多くの行商達を襲った熊との戦いで得た戦術をふんだんに発揮した。
鉄砲や大筒を使って遠くから安全に攻撃出来る事と、敵の闘争心と執着心を利用して冷静さを奪う戦法が的を射た事で、イオナリはトントン拍子に出世し遂には王室側近軍師に就任した。
そんなイナオリを雇ったエイジオブ帝国もまた、当時の世界の常識にとっては異彩過ぎる戦術が功を奏してトントン拍子に勝利を重ね、遂には二大強大大国の一角であるマッホーウ法国にすら勝利した。
だが、そんなイナオリの強運はある日を契機に終焉を迎えた。
豊臣秀吉の生まれ変わりであるオラウ・タ・ムソーウが、もう一角の強大強国であるムソーウ王国の第三王女として生を受けたのが原因であった。
つまり、オラウにはクーデタードアがまったく通用しなかった……
それどころか、指揮している部隊をほぼ無傷でヨツメ大隊が担当する砦の第一次をほぼ無傷で占拠してしまったのだ。
「で……砦を占拠しているオラウ・タ・ムソーウは?」
「まったく動きません」
イオナリはその報告を聴いて頭を抱えながら天を仰いだ。
「……そこら辺の馬鹿な将校とは違うと言う事か……早急に討たねばとんでもない禍根になる
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