暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第102話 憂国 その2
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ていただけだ。どうか別人であってほしいと別の意味では思うが、思い返せば返すほど同一人物としか思えない。

「ではどうしてかね? 温厚篤実と評判の君らしくもない行動だと思わないかね?」
「レポートの提出が遅くなったことはお詫び申し上げます。またレポートの内容が、時機を逸してしまった可能性が高いことも併せてお詫び申し上げます」
 俺が深く頭を下げて最敬礼すると、執務席に深く腰掛けたトリューニヒトは呆れたと言わんばかりに深く溜息をつく。
「……しかしそれとヴィリアーズ君とどのような関係があるのかね?」
「踏み込んだことをお聞きいたしますが、ヴィリアーズ氏の機密接触資格レベルは、通常の議員私設秘書と同様と考えてよろしいのでしょうか?」
「勿論だとも。彼は私の指示なく君のレポートを開くような真似は絶対しないだろうし、君も当然プロテクトはかけているんだろう?」
「世の事象に絶対という言葉はありません。プロテクトとて時間と手間をかければ解除することもできるでしょう。彼がとびきり優秀な人物であるとは理解できますが、軽々しく知人でもない軍人に対し機密情報を話させるようと仕向ける人物は、信用に値しません」

 まして内容は海賊討伐に関わる。話した内容が海賊組織に流れれば、今後の討伐行動に支障が出るのは疑いない。知人だろうがそうでなかろうが、海賊と通じていようがいまいが関係なく、無資格者が話させようと仕向けること自体が問題だ。反権ジャーナリストだってその辺は弁えている。

「なにもヴィリアーズ氏が海賊のスパイであるとか、そう申しているわけではなりません」
 実際は別の組織のスパイであるが、既にトリューニヒトの私設秘書として働いている以上、公平中立な証拠がない限り、主張しても誹謗中傷と取られるだけだ。即座にブラスターで蜂の巣にしてやりたい気分だが、ド田舎の検察長官とはわけが違うし、原作における未来ではともかく、現時点で銃殺に値する罪を犯していると証明されたわけでもない。それに下手をしなくとも外交問題になりかねない。
「ただ小官にとって現在のヴィリアーズ氏は、『ハイ、どうぞ』と重要書類を預けるほど信用できる人物ではないということです」
「……なるほど」

 頬杖をかき、左手人差し指がコンコンと規則正しく音を立てる。トリューニヒトが長考する時の癖だ。ヴィリアーズ氏と俺を天秤にかけているのかまでは分からないが、少なくとも自己の生存にはどちらを優先するかくらいは考えているだろう。優先するとしたらたぶん俺ではない。五分もそうしていただろうか、人差し指は動きを止め、両手が組まれて俺を正面から見据える。

「ヴィリアーズ君はポレヴィトで家庭的には恵まれない幼少期を送っていてね」
 それは両父親が軍の高官であり、少なくともこの世界では家族愛に恵まれて育った俺
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ