暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第201話:燃える足跡
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耳に着けたイヤホンから流れる音楽に合わせて踊っていた。これは近々行われるコンサートの練習。目前まで迫ったコンサートに向けて、2人は振り付けを体に沁み込ませる為練習に精を出していた。

 練習は完璧、何時も通りの出来栄えに、振り付けを担当しているコーチも満足そうに頷いた。だが、翼の中に僅かな憂いがある事を奏は目敏く気付いていた。外から見ているだけでは分からない、翼と付き合いの長い彼女だからこそ気付けた違和感。

「うん、大丈夫そうですね」
「いえ、もう少し練習を……」
「ストップ、翼。これ以上は逆効果になる。一旦休もう」
「奏……ふぅ」

 振付師の見立てに反して尚練習を続けようとする翼だったが、奏がそれを制止し彼女を練習用のスペースから引っ張る様に下がらせた。そこには慎次と、彼と同じ格好をしてサングラスを掛けているマリアの姿もある。
 マリアは何やら疲れた様子の奏の姿に、彼女が何かに悩んでいるのではと勘違いして声を掛けた。

「どうしたの、奏? 何か悩み事?」
「いんや? どちらかと言うと悩んでるのは、翼の方さ」
「翼さん?」
「気になってるんだろ? この間の事がさ」

 先日の米軍艦隊襲撃の折に姿を現した錬金術師と魔法使い。連中が次に何をするかが分からない為、その事に翼は心の奥で不安を感じていたのだ。ただ奏が傍にいる為、彼女は平常を保てていただけの話である。もしここに奏が居ないなんて事があれば、翼は練習にも身が入らず振付師も納得してはくれなかった事だろう。

 自身の心の内が見抜かれていた事に、翼は敵わないなと苦笑しながら肩から力を抜いた。

「奏には敵わないわ……そう、確かに不安を感じている。南極からの帰還途中で、あんな事が起きたのに、果たしてここは、私の立つところなのだろうか……」

 翼には風鳴の家に生まれた防人としての一面がある。だがそれと同時に、彼女は歌姫としての自分も確固とした存在として自認していた。戦場に立つべきと叫ぶ自分と、舞台の上に立つべきと告げる自分、二つの心の板挟みに足場がグラグラと揺れているような不安を感じていたのだ。

 それを的確に感じ取った奏は、彼女を安心させるべく優しく包む様に抱きしめた。

「だ〜いじょうぶだって。翼の気持ちも分かるけど、アタシらはやるべき事をもうやり終えた。後の事は、任せるべきところに任せればいい」
「でも……それに翼にそんな事言われたら、アタシだって一緒に行かなきゃならなくなる。アタシは別に構わないけど、翼はアタシと一緒に歌うのは嫌か?」
「そんな事ないッ! 私だって、奏と一緒に羽搏いて、歌いたいッ!」
「ほら、答えは出ただろ?」

 奏のしてやったりな顔に、翼はハッとした顔になった。自分はまんまと彼女に誘導されて、迷いを振り払わされてしま
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