MR編
百六十一話 王墓の闇を超えて
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く光りを放つ其れは浮遊上アインクラッド内の各所に配置されている転移門にも似ていて、此処まで一方通行だったこのダンジョンにおいてその意味するところは直ぐに察しが付いた。
「え、あれもしかして帰還ポイント?」
「は、はい。アイリさん達が話してる間に出てきて、二人は一応危険があるかもしれないから先に向こう側を確保してくるって、アレに……」
「い、いつ!?」
「サチさんが叫ぶちょっと前です……」
「タイミングわっるーい!!!?」
最悪だ、およそ考え得る限り最も悪いと言っていい。サチが上げた一世一代の叫びにそりゃないだろうとアイリは喚く。対してそのサチはと言えば……
「あ、あはは……」
安堵と、何処か困り果てたような……そしてわずかに落胆したような声で、乾いた笑いを浮かべていた。
────
「…………」
サチとシリカ、アイリの背中をユウキが眺めて居る。彫像のように硬直した彼女は後ろ手に手を組んで微動だにせず、わーきゃーと騒ぐ三人の背中を深い紅色の瞳に写して立ち尽くす彼女の肩を不意にポンっと誰かが叩いた。
「っ?」
「ユウキ?」
どうかした?と首を傾げて問い掛けるアスナに、首を振って彼女は微笑んだ。
「ううん、どうもしないよ?」
「そう?今回は大変なダンジョンだったし、もし身体が辛かったりしたらちゃんと言ってね?」
「へへ……ありがとアスナ、でもボク全然平気だよ?いつもより調子が良いくらいだもん」
それは嘘ではない。歯ごたえのある冒険の余韻はまだ心に残っていて、昂った精神がまだ体を火照らせているようだ。森の家に戻ってから今日の冒険の話をしたり、ナイツの面々にこの話をするのが今から楽しみだった。
「……そっか、じゃあ戻ったら、ケーキとお茶でお疲れ様会しようね」
「ほんと!?わぁっ、楽しみ!!」
笑い合いながら二人の少女は魔法陣へと近づいていく。一通り喚き終えたらしいアイリを宥めながら歩くシリカにサチが続き、その後ろをユウキたちが続く。前を行くサチの後ろ姿を眺めながら、ユウキはふと先程の彼女の言葉を思い出す。
『私にとってのリョウは特別だよ!凄く……凄く“特別”なの!』
本当に、好きなのだなと思う。
今まで分かってはいたけれどはっきりとは聞いたことが無かったその言葉は確かに恋する少女のそれで、きっとむずがゆいとはこういう感覚の事を言うのだろう。アスナの友人である彼女はユウキにとっても既に大切な友人で、彼女とリョウは自分の目から見ても隣に居る事が本当に自然な、お似合いの二人だし、心から幸せになってほしいと思う。だから……
「…………」
ほんの少しだけ感じるこの胸の痛みは、心配ともどかしさなのだろう。そう結論づけて、ユウキは光り輝く陣へと足を踏み入れた。
────
「それで、どう
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