MR編
百六十一話 王墓の闇を超えて
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てわが身に突き刺さるような言葉に内心で苦し気に唸る自分の心を、アイリは「けれど」と慰めた。
だって、あんまりではないか。あの時、自分があんなにも素直に彼の心が自分に向くことは無いと受け取められた理由の一因には、間違いなく彼女の事があったのだ。既に彼の心が選ぶ相手は決まっていると、そう知っていたし思っていたからこそ始まった瞬間に終わる恋だとしても受け入れる事が出来たというのに、肝心の本人がこの言い草、この認識ではあまりにも……だから、少しだけ意地悪を言いたくなってもそれは仕方のない事で……そう思ってはみるものの……
「(うぅ……胸が痛い……)」
「あ、あの、あのね!」
「えっ?」
そんな事を考えていた思考がぶった切られて、アイリはどこか間の抜けた声を返す。突然だったとはいえ余りにも抜けたそれは、ただ驚いただけではない、響き渡ったその声が、普段の彼女ならばまず出さないほどの大きな声だったからで、不覚ながら軽く肩が跳ねてしまった。再び目の合ったサチは一度自分を落ち着けるように大きく息を吸って、吐く。また吸って、吐く、おまけにもう一度、そして……
「り……リョウにとっての私は、分からないけど……私にとってのリョウは特別だよ!凄く……凄く“特別”なの!だから!……だから……」
だから、なんなのだろう?続く言葉が喉元まで出かかって、けれども言葉にすることが出来なくて、開きかけた口から出す言葉を忘れてしまったように彼女は沈黙する。少しだけ沈黙が気まずく、しかしにんまりと笑ったアイリの顔がそれを破った。
「うーん、うん。うん。サチの気持ちは伝わったけど……でもいいの?今の声、結構おっきかったけど……?」
「えっ?」
言われてみると遮二無二出した少し大きな言葉は存外部屋中に響いている。途端に自分がさっきよく考えずに行った言葉の内容と……この部屋には、その“特別”ことリョウもいるという事実を思い出した。自分の顔が真っ赤になっていくのを確認する……よりも早く、アイリが大声でリョウ達の方へと歩き始める。
「ねーリョウ!!」
「っ!!?」
「リョウリョウ!!今の聞いてたー!!?」
「わーっ!ワーッ!わぁぁぁっ!!?」
心底楽しそうにずんずんと進んでいくアイリの袖をつかんで喚きながらサチは彼女を止めようとするものの、悲しいかな前衛型と後衛型の筋力値の差では勝負になる筈も無く、ズルズルと引きずられながら前進していくのみだった。向かう先に立つアスナとシリカ、ユウキがなんともくすぐったそうな、そして微妙な表情で二人を見ている。しかし……肝心のリョウと、キリトの姿だけがその場に見えず、アイリはパチクリと目を瞬かせた。
「あれ?リョウは?」
「それが、リョウさんとキリトさん、あれに……」
シリカと指した先には地面に描かれた魔法陣があった。薄
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