MR編
百六十一話 王墓の闇を超えて
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と手を振って明らかに何かを言いつける雰囲気を纏って走り出そうとするユウキに全力で突っ込むリョウに、彼女は悪戯っぽく笑って軽くくるりと振り向いた。
「へへー、仕返しだよっ!」
「……にゃろう」
口をへの字に曲げたリョウに満足げに笑って、アスナの方へと駆けだし……掛けて、二歩も行かないうちに再び振り向いた。
「あ、リョウ!」
「ん?」
「んとね……さっき、ホントにありがとねっ!」
「おう、気にすんな」
律儀な奴だと思いながらも軽く手を振るリョウに弾けるように笑いかけて、今度こそユウキは駆けていく。跳ねる様にかけて心配そうな顔のアスナに飛びついた彼女を見送ったリョウの隣に立つ影が一人。
「お疲れ様、はい」
「おう、お互いにな」
手渡されたポーションを受け取って一口煽ると、不意に、傍らに立つサチがジッと自分の顔を覗き込んでいる事に気づいた。
「ん、なんだよ、顔になんかついてるか?」
「ついてないよ?……仲良くなれた?」
「…………主語付けろよ、せめて」
苦虫をかみつぶしたような顔をするリョウに、クスリと笑ってサチは歌うように言う。
「じゃあ、言い直すね。ユウキと仲良くなれた?」
「……別にそれ目当てでカバーしたわけじゃねぇぞ?」
「うん、分かってるよ?でも……二人とも楽しそうだったし……リョウ、ちょっとユウキにはいつもより不器用だし……」
「まぁ、アイリにも似たような事言われたけどよ……お前ら割と節介焼きだよな……」
「心配なんだよ。大切な人だからユウキも……その、リョウも」
「まぁ、そりゃありがてぇんだけどよ……ガキじゃねぇんだから別にんなやたら見守られなくてもよ……」
「うん、分かってる。これからは程ほどにするね?」
「……おう、頼む」
いまいち釈然とはしない物の、理解してもらえたようだとリョウは話を区切る。彼としてはそこでこの話は終わりと言う位だったのだが、意外にもと言うべきか、サチの方がそう言うつもりはないらしく、更に……今度は少しだけ険しい顔で、自分の方を覗き込んでくる。その顔はどこか怒っているようにも見えた。
「……なんだよ、まだあんのか?」
「……その……色々、リョウも考えてたんだとは思うんだけど……でも……やっぱり言わないとって思って……」
「歯切れわりぃな、なんだよ」
若干苛立ったように聞き返すが、別に本心からいら立ちを覚えているわけではないし、それはサチにもわかっていた。むしろリョウの表情は疑問を覚えているようなそれだ。というのもサチは言葉のテンポが早い方ではないが、それにしても今回は歯切れが悪いからだった。実際彼女はかなり長い時間言葉にするのを躊躇しているようだったが……やがて意を決したように、じゃあ……と切り出した。
「……なにも覆いかぶさる事、無かったんじ
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