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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第101話 憂国 その1
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ねばならない。軍人による国家軍事戦略立案独占を、軍人である君自身が一番危惧していた」

 国防委員会にあっても軍事の経験も知識も乏しい議員(アイランズ)と親交を深め、官僚達の軍人に対する精神的な距離感の解消に努め、特に日の当たらない後方勤務の軍人に政治への関心を意図的に高めさせ、独自の『サロン』で現在同盟が抱える問題の共有を図り、最終的にはボトムアップにより国防政策局長を巻き込んでのドクトリン変更の機運を盛り上げようとした……

「半年前に私の前であれだけの啖呵を切っておきながら、同じ内容を実際の書面として残すのは避ける。根拠となるような資料を作ったのが、結局は軍人であったという物的証拠を残しては後々不味いという配慮だろう」
「小官の保身から故とはお考えにならないのですか?」
「保身を第一に考えるような軍人であるなら、私とこうやって会うことは避けただろうね」

 そんなの元から断れないではないか、とは言えない。どうしても嫌ならばシトレなりビュコック爺様なり、あるいはボロディン家の名前を使って断ることはできた。この怪物と仲良くしたいなどと今でも思っていないが、一つの契機であると考えていたこともまた確かだ。抱える自己矛盾に、自分自身の存在自体が疎ましくなってくる。

「少し時間をいただきたいと思います」

 とにかく考える時間が欲しい。考えたところでレポートの存在にトリューニヒトが気付いている以上、今更どうしようもないのだが、落ち着いて状況を再認識する必要がある。

「いいとも。ゆっくり考えたまえ」

 俺の回答にトリューニヒトは、例のウィスキーが入ったテイスティンググラスを掲げ、いつもの舞台俳優を思わせるキラキラ笑顔を見せて言った。

「ただし時間がそれほどないことは、君も十分承知していると思うがね」
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