第101話 憂国 その1
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
々と口が軽くなってくる。
政治家に対してはそうやって集まってきた小ネタを取捨選択して質問取りレクや接待などの場で披露しつつ、そんな面白いネタを持っている彼らがちょっと困っているんですよねと、問題点をシンプルになるべく短い言葉で簡単に説明するようにした。その場で問題が解決することはまずないが、あとから「あれなんだっけ」と連絡が来て、改めてレクをする状況を作り出せるようにした。
一ケ月もそんなことをしていると、この仕事についてから集中線のように広がっていた人脈が、ただの線だけではなく面や立体へと進化していく。
なにしろ俺を挟んで利害対立していた者同士が、宴席や俺の執務室で酒や肴を持ち寄って勝手にあぁだこうだと議論し始めるようになったのだ。一番偉い連中はエングルフィールド大佐のオフィスに行くが、実際に原稿を書いたり調整したりする実務者は、俺のオフィスで管を巻いているなんてことがしばしば。そんな彼らが微妙に酔った段階で、ほんの少しずつ毒を混ぜるように『同盟ってもしかして足腰が弱まってますかね』みたいな話を囁いていく。
瞬時に反応したのは経済・財務関係の中堅から下級官僚達で、俺が何を言いたいのか直接探ろうと色々と資料を勝手に持ち寄ってくるようになった。上級官僚達もその動きに気付いているみたいだったが、国防委員会の考え方を知る意味でも見て見ぬふりをしているようだった。
軍関係者では特に人的資源と造兵関連の管理実務者達が、俺がどういう考えの持ち主か軍内部で探りを入れ始めた。第五・第八艦隊司令部や査閲部・情報部などの旧職や知人のいる部局、直接会ったバウンスゴール大佐などに聞いてまわってようで、モンティージャ大佐が「進取果敢・温厚篤実・海闊天空・英邁闊達な人物だと言っておいたぞ」と爆笑しながら教えてくれた。
政治家や民間人には特にそう言う囁きはしていないが、「なんか最近やたらとボロディン君のことを嗅ぎまわっている軍人や行政職員がいるけど大丈夫かね?」と心配して教えてくれるようになった。何しろ法に反することはこの一件については、「職場における飲酒」以外にはない。
そうやって官僚が持ち寄ってくれた資料、探りを入れに来る軍の中堅管理実務者の愚痴、実際に経済活動を行っている民間企業の中堅幹部の噂話、その他いろいろな人々からの話や情報を纏めながら、二ヶ月。表も裏も通常通りの仕事をしながら、暇な時間を見てはレポートを書き進めた。内容は一般に公開されている統計資料を基礎資料として、今後イゼルローン攻略を数年おきに『失敗』しつつ宇宙艦隊による機動縦深防御ドクトリンを継続する場合と、自説であるイゼルローン回廊出口付近に重層防衛ラインを構築する場合での国家経済力と軍事力のシミュレーション比較について。
本来ならばこういうレポートの作
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ