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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第101話 憂国 その1
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造力・加工精度が低下し、定期検査以外での製造ラインの停止が何度かあって、製造能力を十全に発揮できていないとのこと。

「耳が痛い話ばかりして申し訳ない」

 帰りのシャトルの中で、ハッキリとした口調でバウンスゴール大佐は俺に謝罪した。聞く相手がアイランズだった場合、もう少しソフトな言いようになることは推測できる。失政を推測させるような話ばかりして下手に機嫌を損ねては、せっかく来てもらったのに聞く耳を持たなくなってしまう可能性があるからだ。

 だから御伴一人だけになったので、各担当者とも口調に遠慮がなくなった。予算不足による技術開発の遅れ、サプライヤーの製造技術能力の低下、熟練労働者の前線抽出による運用能力の低下。国家事業としての軍事生産分野にすら不都合が現れてきている。民生分野の不都合は恐らくもっと多いだろう。俺のようにズルするわけでもなく、こうやって誰か言われなくとも状況をハッキリと把握していた、ピラート中佐の観察力は専門とはいえやはり尋常ではない。

「いいえ、皆さんの本音がハッキリ聞けて、逆に良かったです」

 いずれにしても一朝一夕で解決できる話ではない。生命の大消費活動である戦争がある限り、状況が好転することはなかなか難しいだろう。内政努力だけで何とかなるとは到底思えない。せめてイゼルローン攻略を中止し、回廊封鎖により帝国軍の侵略を阻止できうる状況が出来れば、一縷の望みはある。

 その為に首飾りのビーズを回廊出口に敷き詰めることを俺は考えていたわけだが、日常的に主力として建造・製造されている艦艇・兵器ですらこのありさまだ。首飾りの量産という命題について予算もさることながら、より技術的な問題の方が大きい可能性も出てきた。

「来年度予算について、恐らく総額概算は近々に出るでしょう。折衝は三ヶ月後くらいから始まると思います。予算案の修正については統合作戦本部から提出されるので、バウンスゴール大佐や皆さんのご希望に添えるかどうかは分かりません。ですが国防委員会参事部として、補佐官全体でこれらの問題は共有するつもりです」
「統本(統合作戦本部)の一課(戦略部)連中は、自分達の給与と作戦経費のことばかり頭にあるから、それだけでも助かるよ」
「ははは……」

 チェン秘書官が余計なことする前の見学申請の段階で俺の『身体検査』はしているはずだから、一課には戦略研究科の俺の先輩や後輩がうじょうじょいることを知っている。知っててそう言うのだから、バウンスゴール大佐も意外と人が悪い。自然と頬が引きつっていくような感覚を覚えるが、師匠直伝の補正機能を使って何とか笑顔に戻していく。

「二日間ありがとうございました。もし参考人質疑になりましたら、よろしくお願いします」
「それはこちらとしても望むところ。是非にも」

 敬礼
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