第101話 憂国 その1
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ガートラムししろ、クリシュナにしろ、シヴァにしろ、限られた収納空間と機関出力の中でどうやったら火力を強化できるか模索した結果、あぁもヘンテコリンな形にならざるを得なかった。
船体を大きくして今より搭載できる核融合炉を多くすればいいというのは簡単だが、今度はどうやって整備するんだという話になる。プラットフォームの大幅な改変は、建造・整備の為の設備を一から作り上げる必要があるから、かなりの問題がある。
全長は縮んでも横と縦にズンと大きくなったトリグラフが次世代旗艦用大型戦艦としての開発に成功しながら、たった一隻しか建造されなかった、あるいは建造されても配備されなかったのは、そういう整備性の問題でお金の限界があったのであろうというのは容易に想定できる。二回イゼルローン攻略に失敗し、アスターテでは金髪の孺子にボコボコにされ、帝国領侵攻で遠征軍の七割を失い、とどめを刺されたのは人的資源だけではない。
「大佐は賭け事が強いほうですか?」
故に大佐が俺に問いかけてきた理由は分かる。答えは二つ。新型核融合炉の研究促進のための予算付けか、次世代旗艦用大型戦艦(トリグラフ級)建造用ドックの建設予算付けか。研究開発予算は限られている上に、艦船関連の予算は中でも金額が大きく動く分野であるので、大佐の言い分だけを聞くわけにはいかないし論理づけもしっかりしなければならないが、どちらにしても大佐の考えを頭の片隅には入れておくべきだろう。
「……一技術者としてはどうかとは思うが、管理職としてこの件に関しては輝かしい革新的成功よりも、堅実な技術進捗を望まざるを得ない。ボロディン中佐、どうかよろしくお力添えを願いたい」
そう言うと、大佐は軍用ジャンパーの胸から高耐久型の携帯端末を取り出して、俺に機密書類を映して見せてくれた。そこにはアイアース級よりも横にデカい宇宙母艦用の大出力核融合炉を主機関とした、三つの頭を持ち天空と地上と地下の全てを支配する、スラブの大神の姿があった。
それからバウンスゴール大佐とマン・ツー・マンで軌道上にある複数の兵器廠を巡った。標準型巡航艦を建造する第二軌道造兵廠では、バウンスゴール大佐と同じ立場の管理官から、部品メーカーからの恒常的な納品遅れや精度不適合品の納入が頻発し、それを取り除いたり再加工したりする余計な手間がかかって生産効率が低下していることを滾々と説かれた。
レーザー水爆ミサイルを製造する兵器廠では、逆に生産ラインからの熟練整備員の前線基地への配備について涙ながらに抗議された。ここの全自動製造ラインは一時間当たり一万二〇〇〇発を製造できる能力を持つが、それはあくまでも完全にラインが機能する時に発揮できるスコアだ。工作機械自体の経年劣化だけでなく、整備員の能力低下によるメンテナンス不良が原因でラインの製
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