第七百五十話 練習中にまた話をしてその五
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「最初の日本一に導いた」
「そんな人だったか」
「フォークが武器だったが」
この時代の日本でも元祖フォークボールと呼ばれている、一旦揺れてから落ちる独特のフォークだったという。
「しかしあまり投げなかった」
「そのフォークとか」
「そうした人だった」
「それでそれだけ投げてか」
「日本一に導いた」
中日をというのだ。
「そうした」
「そうだったんだな」
「ペナントでもな」
即ちシーズンでもというのだ。
「投げ続けてだ」
「勝ったか」
「フォークがある」
この切り札がというのだ。
「そのことを相手に意識させてな」
「他のボールを投げたんだな」
「ストレートとカーブをな」
この二つの球種をというのだ。
「投げてここぞという時にだ」
「フォークか」
「それを投げていた」
杉下本人が言うにはこの球種は川上哲治に対して主に投げていたとのことだ、セリーグで最も強力だったバッターへの武器だったのだ。
「そしてだ」
「勝っていたか」
「この人もかなり頑健でな」
そうした身体でというのだ。
「そこまで投げた」
「そうだったか」
「しかしな」
ここでタムタムはこうも言った。
「シリーズを投げ終えてだ」
「中日を日本一にしてか」
「最後の試合も投げてだ」
そうしてというのだ。
「完投勝利だったが」
「七戦中六戦投げてか」
「最後そうして勝ってな」
「日本一か」
「チームをそれに導いたが」
しかしという口調で言うのだった。
「その直後崩れ落ちた」
「そうなったか」
「流石にな」
「力尽きたんだな」
「勿論その後も投げ続けたが」
「来シーズンからか」
「しかしそのシーズンはな」
どうだったかというのだ。
「そこでだ」
「終わったか」
「本人さんも終わったと思ったんだろう」
杉下自身もというのだ。
「そこでだ」
「終わったか」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「シリーズMVPになった」
「まさにその人がいてか」
「中日は日本一になったからな」
それが誰の目から見ても明らかだったからだというのだ。
「そうなった、この通り当時はな」
「エースが先発でか」
「連日連投がな」
「当たり前だったか」
「日本もそうでな」
「アメリカもか」
「それが一九七〇年代から変わった」
この頃からだというのだ。
「おそらくだが人の身体が変わった」
「変わった!?」
「医学が進歩してな」
そうなってというのだ。
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