第八十六部第三章 学園の理事長としてその三十八
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「我々はな」
「やっていっていますね」
「市民を命を賭けて守ろうという気持ちは素晴らしい」
「その職業倫理は」
「それは持っていくべきだ、だが」
「それでもですか」
「騎士道とは違う、騎士道は道だ」
それだというのだ。
「誇りではなくだ」
「そちらですか」
「そうだ」
こう言うのだった。
「やはりな」
「それで、ですね」
「そこでは負けている、日本軍は何故強かったな」
「ご先祖の人達は」
由良も言った。
「それは、ですね」
「武士道があったからだ」
「武士として戦い命を賭けていた」
「誇りを持っな、鉄の如き軍律と日々の猛訓練とだ」
「武士道ですね」
「その三つがあった、だからどの様な状況でも戦った」
硫黄島の様な絶望的な状況でもだ、この戦いでは日本軍は制海権も制空権もなかった。そのうえで完全に包囲されていた。
だがそれでも硫黄島の日本軍は全員が玉砕するまで戦った、そして自分達以上に多くの敵を倒したのだ。
「死ぬこともだ」
「覚悟して」
「散華した、今の連合軍は市民を守るが」
それでもというのだ。
「しかしだ」
「それでもですね」
「あの様に。玉砕なぞだ」
「とても出来ないですね」
「市民を安全な場所まで逃がせば」
それでというのだ。
「劣勢ならばな」
「退きますね」
「戦略上そこで捨て石にした方がよくともだ」
足止めにし出来るだけ敵を倒すということだ。
「それでもだ」
「その場合でも」
「撤退だ」
「無駄に死ぬな、ですね」
「私もそう命じる、玉砕はだ」
「断じてないですね」
「連合軍にはな」
そうだというのだ。
「何があろうとも」
「そういった命令は出せないですね」
「出してもならない」
「軍人もまた市民ですから」
「市民を犠牲にすることなぞだ」
生臭く言えば有権者になる、有権者に死ねと言っては政治家が選挙で勝てる筈がないのだ。
「あってはならない」
「決して」
「だからだ」
「そうなりますね」
「戦略上必要でもな」
「死ぬなとは言えないですね」
「市民を守れと言えてもな」
それでもというのだ。
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