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冥王来訪
第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その1
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かけたな。
それにしても、アクスマンとシュミットのやり口は、酷い。
ともかく、今回の件は、我々に任せてほしい」
そういったものの、不安は広がるばかりであった。
 
 何か問題があるとそれに追従するように、問題は起きる物である。
査問会で、アクスマンの忌まわしい話を聞いた翌日、今度はソ連からの外交秘密文書が届いた。
 その内容は、ソ連が占領中のケーニヒスベルクをポーランドに割譲する代わりに、ポーランドが戦後自国領に編入したポメラニアを含む西プロイセンとの交換の提案であった。
 仮にポーランドがこの提案を受け入れたとしても、問題は、東ドイツとポーランドだけで済む話ではなかった。
 ポーランドとドイツの国境策定は、両国の意思を関係なしに、戦勝国が、オーデル・ナイセ線を国境として策定したのが始まりである。
東ドイツ政府の頭越しで、1950年にソ連が決めただけではなかった。
 東方政策を進めるヴィリー・ブラントが、1970年に西ドイツ政府を代表して、ポーランドと平和条約を結んだ後であった。
ゆえに、この問題は東ドイツとポーランドでは決められない問題となっていたのだ。

 早朝からの閣議で、この話が持ち出されたとき、出席者の全員がきょとんとするほどの事態であった。
 時期も悪かった。
来週からの東京サミットには、オブザーバー参加として東ドイツの議長が呼ばれることになっているし、時を同じくしてポーランドのダンツィヒで米軍・NATO軍との合同演習にも東ドイツ軍は参加することになっていたからだ。
「どうする」
議長の声は、詰問調になっていた。
「同志議長、米国と日本の誘いです。
両方とも受けましょう。
そして、この機会を利用して、全世界にソ連の秘密外交の手段を暴いてやればいいのです」
参謀次長のハイム少将の答えに、アーベル・ブレーメは待ったをかけた。
「私としては、ソ連の提案に応じて、オーデル・ナイセ線の問題を解決したい。
ポーランドに編入された土地が戻ってくれば、戦後のわだかまりは、いくらか軽減される」
「ケーニヒスベルクを諦めろというのですか」
 声を荒げて反論したのは、シュトラハヴィッツ中将だった。
「同志ブレーメ。
私は戦争中に戦車兵として、東プロイセンにいましたが、あそこで大勢の仲間を失ったのですよ。
それを簡単にソ連の国内の都合であきらめろというのですか。
絶対にそのような反論が出ることは間違いないでしょう。
それに西ドイツが絡んだとなると、先々の統一交渉にも影響しますし……
また、オーデル・ナイセ線の問題は、ポーランドとの友好関係も悪化します。
どうも今回の件は、ソ連の独自の思想に基づいた遠交近攻(えんこうきんこう)政策に思えるのです。
同志議長、どうか、熟慮を……」
 議長は、何も言えなかっ
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