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冥王来訪
第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その1
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げた偽造資料であった。
 鎧衣は、私文書を作り、アクスマンに渡した。
彼から、東ドイツの国家機密である、東ドイツ政府の財政状況の秘密を手に入れる為である。
そして、アクスマンは、その私的文書を基にし、針小棒大にゼオライマーの性能を書きなぐった。
 その文書は、アクスマンが東ベルリンに滞在している西ドイツ常設代表部の職員に渡した。
そこから連邦情報局(BND)のアリョーシャ・ユングを経由し、米国に渡ったものである。
 東西ドイツ間では、1972年12月21日の東西ドイツ基本条約以降、奇妙な外交関係が樹立された。
両国ともに、常設代表部というという非常設の外交使節団を、それぞれの首都に設置した。
 1961年のウイーン条約とは別に、独自の外交ルールに基づいて、双方の常設代表部は運営された。
双方ともに代表は、東ドイツ外務省と西ドイツ国務省の職員であったが、連絡は相手政府に行くような仕組みになっていた。
 では、双方の常設代表部の簡単な説明をしてみたい。
 西ドイツの常設代表部は、正式名称を連邦共和国常設代表部と称した。
東ベルリンの建設アカデミーの元校舎に、1974年から1990年まで存在した事実上の大使館の事である。
世人は、「白い家」と呼んだが、シュタージは「監視対象(オプイェクト)499」と呼んで忌み嫌う場所であった。
そして、公式の外交使節ではないので、大使や公使とは呼ばれず、代表と称した。
 また、東ドイツ側も同様に、西ドイツの臨時首都・ボンに常設代表部を設置した。
正式名称を民主共和国常設代表部と言い、4階建ての白い建物で、全ての窓枠には金網がはめ込んであった。
周囲を高いフェンスで守られ、西ドイツ警察の選りすぐりの部隊が、24時間体制で警備をした。
 ほかに職員用の住宅が隣接されており、代表用の邸宅もヘーゼルにはあった。
代表の邸宅は、1960年代に作られた別荘を改修したもので、これは2024年現在、取り壊されている。

 さて、話をムアコック博士の所に戻したい。
彼は、アクスマンのファイルを見て、ゼオライマーの武装である次元連結砲が、荷電粒子砲であると勘違いしていた。
 それは、アクスマンがCIAから30万ドルの大金をせしめるために作った全く根拠のない文書ではあった。
それらしい科学的な考察を、シュタージお抱えの科学者に書かせたのである。
 実際は、マサキの作った次元連結システムも、それを応用した武器も全くの謎ではある。
だが、ムアコック博士は、その論拠を偽造文書に求めることにしたのだ。

 情報の流出元である、当の東ドイツも、そのことをベルリン訪問中のCIA長官から聞いて慌てるほどであった。
急遽、事実関係の調査という事で、アクスマンが生前勤務していた中央偵察総局の関係者に対する査問会
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