第三章
25.ローレシア王、死す
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の魔物たちが、遠位から左右に分かれていった。それがすぐに軍団の内側まで伝播してゆき、広い道ができていった。
そのような指示までは、アークデーモンから出ていない。
原因となったのは、空間を駆けてきた数名の人間たち。いや、その先頭にいた一人の人間だった。
ヘッドギアからあふれる茶色がかった金髪を揺らす青年。サマルトリアの王子・カインである。
カインは、魔物に取り囲まれた空間のど真ん中にローレシア王・ロスの倒れている姿を認めると、そばまで行き、遠巻きに包囲している魔物たちを一瞥してしゃがみこんだ。
並の人間であれば、隙だらけということで一斉に襲いかかられているだろう。しかし魔物たちは武器や爪を構えたまま、その場を動かなかった。否、動けなかった。
「ザオリク」
静かな詠唱。
ロスが小さなうめき声をあげた。
カインはそれを確認してわずかに微笑を浮かべると、槍先が刺さったままの彼の体を両手で抱え、立ち上がった。
「ロス、ごめん。刺さってる槍はそのままにするよ。今抜くと失血死するかもしれないから」
「へ、兵士……たち……は……」
「大丈夫。見逃してもらえてたみたい。見えてないと思うけど、全員ここにいる。ここに来る途中で会った」
安心したロスが、その身体を完全に預けた。
荷物持ちの兵士たちも寄ってきて、カインの身体に触れる。
カインは魔物の群れの奥を見た。
雪でやや白っぽく見えるが、ギガンテスの巨体の前に、魔術師・フォルの姿が確かにあった。
「お見事」
呪文を唱える前に一言、そうつぶやく。
「ルーラ」
一行は、空へと消えた。
ルーラで飛んだ先は、サマルトリア城のすぐ近くだった。
おそらくロンダルキアの祠ではないだろう――カインはそう思っていたため、意外な場所ではなかった。
のどかな景色だった。
丈の低い、しかし豊かな草が柔らかな日差しを浴び、ところどころに緑を付けた樹が点在していた。
カインは、ロスを草の絨毯の上に降ろした。
兵士たちが見守るなか、まずはベホイミで全体を回復させ、次に刺さっている槍先をゆっくり抜きながら、やはりベホイミの呪文をかけていく。
激痛であるはずだが、ロスは顔をしかめることもなく、ぼんやりと青空を眺めながら施術を受け続けた。
「回復は無事終わったよ。もう大丈夫」
血まで拭き終えると、カインはロス本人にではなく、傍にいた兵士たちに向けて言った。
意味を察した兵士たちが、声の届かないところまで離れていく。
風が、吹いた。
ロンダルキアの刺すような雪風とは違う。サマルトリアのそよ風は限りなく優しかった。
「……俺
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