第百二十七話 お金の価値その五
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「あの世界はね」
「いたくないでしょ」
「法律ないから」
文字通りの無法地帯である。
「暴力ばかりでね」
「弱いとね」
「普通に殺されるから」
「いたくないわね」
「ええ、核戦争起こったら」
当時はこの危険が常に意識されていた、そうした時代だったのだ。
「それでね」
「ああなるって思って」
「核戦争なんて起こって欲しくないってね」
その様にというのだ。
「思ったわ」
「そうよね」
「核兵器のことは知ってるけれど」
それがもたらす災厄はというのだ。
「それよりもこんな世界になるのって思うと」
「嫌だったのね」
「ええ、あの作品の舞台日本らしいけれど」
「えっ、そうなの」
カンボジアの娘は富美子の今の話に驚きの声をあげた。
「あの作品の舞台日本だったの」
「そうみたいよ」
「全然見えないけれど」
「何もかもがよね」
「アメリカの西部とかじゃないの」
「裁くばかりだからそう思うわよね」
「ファッションもね」
作中のというのだ。
「キャラの名前も」
「一応日本的でしょ」
「いや、何処が?」
カンボジアの娘は富美子に真顔で返した。
「日本なのよ」
「そうかしら」
「主人公の名前はそうでも」
「他のキャラの名前はなの」
「あまりというか全くね」
首を傾げさせながらの言葉だった。
「思えないわ」
「あんたはそうなのね」
「何処からどう見ても日本にはね」
その様にはというのだ。
「思えないわ」
「そうなのね」
「ええ」
こう言うのだった。
「本当にね」
「そうなのね」
「日本らしさは」
それはというのだ。
「あの作品には微塵もね」
「ないのね」
「砂漠と荒野ばかりで」
核戦争後の世界なので緑はないのだ、もっと言えば海も殆どなく兎角自然とは無縁の世界であるのだ。
「悪役の服もね」
「日本じゃないの」
「アメリカの映画に出て来るみたいな」
そうしたというのだ。
「服装でしょ」
「まあそれはね」
富美子も否定せずに答えた。
「私もね」
「否定しないでしょ」
「ええ、普通にね」
それこそというのだ。
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