第三章
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「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「彼等はこのまま我々が占領している地域でだ」
「暮らしてもらいますね」
「人道を考えてな」
こう言ってだった。
東条はドイツの外交官に彼の口で言った。
「彼等を貴国に引き渡すことはしない」
「よいのですか?我が国と貴国は」
外交官は彼の返事に眉を顰めさせて言葉を返した。
「同盟を結んでいますが」
「我が国は独立した国で我が国の政策がある」
東条は毅然として答えた。
「だからだ」
「我が国の申し出を断られますか」
「今彼等は我々の占領地にいるのだからな」
「貴国の管轄下にありますね」
「だからだ」
そうであるからだというのだ。
「我々に任せてもらおう」
「我々に引き渡さずに」
「それでいいか」
「このことをし総統にお伝えますが」
「構わない、存分に言ってくれ」
東条はあくまで毅然としていた。
「貴官がそうしたいのならな」
「それでは」
外交官は東条に忌々し気に答えた、そうしてだった。
彼の前を後にした、その彼を見送っても松岡に言うのだった。
「例えヒトラー総統が直接言ってきてもだ」
「突っぱねますね」
「そうする、我が国には我が国の考えがあり」
「政策があり」
「それに基づいてだ」
「我が国も動いていて」
「人道を鑑みてな」
そうもしてというのだ。
「動く、だからな」
「それで、ですね」
「彼等は保護し続ける」
こう言って彼等への政策を変えずだった。
親衛隊の者が来ても彼等を守り続けた、そして彼等は戦争が終わるまで無事だった。東条はナチスから彼等を守った。
このことを極東軍事裁判で彼が戦犯になった時に弁護人の一人がこのことを言えば罪が軽くなるかもと言ったが東条は微笑んで言った。
「人道を鑑みるのは当然のこと、ですから」
「言われないですか」
「はい、そうします」
こう言って言わず絞首刑となった、このことは長い間広く知られなかった。だが今は知られ多くの者が東条英機という人間を再評価する様になった。彼が多くのユダヤ人を救い護っていたということを。
人道的なこと 完
2023・12・13
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