第二章
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「いいことにはならない、だからな」
「彼等はですね」
「折角我々を頼って来てくれたのだしな」
ユダヤ人達はというのだ。
「引き渡さずな」
「保護してですね」
「このまま上海等でだ」
「暮らしてもらいますか」
「何でもない」
東条は実際にそうした顔で言った。
「人道的な見地でだ」
「そうされますね」
「彼等をその見解から保護したのだ」
ドイツそしてその周辺国でも彼等に刺激され反ユダヤ主義が過激化していた、逃れたのはドイツからだけではなかったのだ。
「それで見捨てるなぞだ」
「人道的にですね」
「しない、彼等はこのままだ」
「保護して」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「暮らしてもらう」
「上海等で」
「このままな」
「それがいいです、彼等は我々を頼ってきたのです」
松岡は東条に強い声で答えた。
「そうした人達を見捨てるなぞです」
「心ある者のすべきことか」
「断じて違います。アドルフ=ヒトラーなぞが何を言っても」
あの外交官が背にした彼がというのだ。
「無視してです」
「彼等を守ってな」
「暮らしてもらうことです」
「八紘一宇は全ての者にあてはまることだ」
まさにというのだ。
「ならばな」
「ユダヤ人はそのままですね」
「人道的見解ということでな」
「彼等を保護しましたし」
「今回も同じだ」
人道的見解から鑑みてというのだ。
「ドイツには引き渡さない」
「そうされますか」
「確かに私はドイツに留学した」
東条は松岡にこのことも話した。
「そして親独派かというとな」
「その通りですね」
「否定しない、だがそれとこれは別だ」
「ユダヤ人達の安全を考えますと」
「それが一番だ、ではな」
「ドイツにはですね」
「言う、彼等は引き渡さない」
はっきりとした言葉だった、これ以上はないまでの。
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