第二章
[8]前話
その話を聞いても私は信じられなかった、彼は隠しごとをしないのでこのことを私以外の同期にも他の社員にも言っていたけれど。
「どうもね」
「信じられないな」
「会社ではスイッチ入れてるって」
「敢えて明るくしてるって」
「そう言われても」
「どうも」
「自分ではああ言ってても違うんじゃないかな」
私達はこう話して考えた。
「実は」
「本当はプライベートも明るくて」
「傍から見たら」
「会社や皆で飲む時やイベントの時も変わらないんじゃ」
「実際旅行でも変わらないしね」
「社員旅行の時も」
実際にその時も変わらない、本当に明るく笑顔で皆を盛り上げてくれる。ムードメーカーだけでなく精神的支柱にもなっている。
「それでプライベートは違うって」
「そう言われても」
「本当は違うんじゃない?」
「やっぱり」
私達の誰もが思っていた、兎に角暗いネガティブで笑っていない彼は想像出来なかった。私も皆も知っている彼はいつも明るいからだ。
けれどある日私は仕事帰りにはじめて行くバーに入って空いている席に座ってカクテルを飲んだ、その中で店内を見回すと。
カウンターに彼がいた、見れば彼は。
黙って静かに飲んでいる、俯いてさえいる。
ちびりちびりとした感じで飲んでいる、皆で飲んでいる時はどんなお酒もジョッキで勢いよく飲んでいるのにだ。
カクテルをそうして飲んでいる、周りも見ないで私にも気付かない。そんな彼を見て私は彼の言っていることはその通りだとわかった。
それで彼に気付かないふりをして飲んでいった、そして彼に気付かれない様にしてそっと店を出た、店を出る時に彼を見ると。
俯いた感じで飲み続けている、私に気付かない。けれど私は確かに見た、彼のいつもプライベートのそれを。
翌日会社に行くと彼は普段通りだった、兎に角明るい。それでオフィスの雰囲気を最高に盛り上げてくれる。全力の仕事振りも含めて。
私は何も言わなかった、彼にも誰にも。だが彼のいつもはわかった、会社でのいつもとプライベートのいつもが。何でも明るい何でも暗い、その両方が彼にあることが。
YOU ARE EVERYTHING 完
2023・10・29
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