第3部
サマンオサ
圧政の国サマンオサ
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そらく四十代前後のようだが、顔色の悪さと異常なくらい細い身体のせいか悲壮感が漂っている。
あれ? でも何となくどこかで見たことがあるような……?
「俺はアリアハンから来た勇者のユウリだ。どうしてもサイモンのことで聞きたいことがあって、勝手ながら鍵を開けさせてもらった」
そういいつつあまり悪びれる様子もないユウリに、女性は怪訝そうに私たちを眺めている。
「ユウリちゃん、今のはどう見ても不法侵入者だよぉ。ごめんなさい、あたしたち、魔王を倒すために旅をしてるんだけど、魔王の城に行くにはガイアの剣が必要なの。聞いた話だとその剣はサイモンさんが……うぷっ」
シーラの話を遮った目の前の女性は、いきなりシーラの口を塞ぐと、血走った目をしながら強引にシーラを家の中へと連れていってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってください!! シーラをどうする気ですか!?」
シーラが連れ去られたことに唖然とした私たちは、すぐさま二人に続いて中へと入る。
部屋の中は最低限の家具とソファーが置いてあるだけで、かつて勇者が住んでいた部屋とは思えないほど質素であった。
女性はシーラをそのままソファーに座らせると、厳しい口調で言った。
「あまり外で魔王とかサイモンとか、大声で言わないで下さい。もし城の兵士に聞かれたら、牢屋に入れられてしまいます」
「え、どーいうこと?」
シーラだけでなく、遅れて部屋に入ってきた私たちの頭にも疑問符が浮かぶ。
「すみません、ご挨拶が遅れました。私の名はコゼット。お察しのとおり、サイモンの妻です」
コゼットさんは、さっきまでの剣呑な雰囲気から一変、控え目に自己紹介をした。
シーラとナギもお互い名乗り、改めてガイアの剣のことを尋ねることにした。
「あの、サイモンさんはこちらにはいらっしゃらないんですか?」
私の問いに、コゼットさんはしばらく沈黙したのち、口を開いた。
「夫はここにはいません。約十年前、あの人はサマンオサの城の兵士に呼ばれ、城へと連れていかれました」
「ええっ!?」
せっかくここまで来たのに、と私は思わず目を丸くする。だが、ユウリは当然といった面持ちで私を横目で見る。
「国の英雄ともなると、国王からの頼まれごとも多いんだろう」
その言葉に、コゼットさんは思いきり首を横に振った。
「あの人は英雄などではありません。それに彼が城に連れて行かれたのは、国家反逆罪に問われたからです。そしてそのままどこかも知れぬ『祠の牢獄』へと投獄されました。それから今でも彼は戻ってきてません」
『!!??』
??投獄!?
コゼットさんの衝撃の言葉に、ユウリはおろか彼女以外の全員が驚愕した。
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