第3部
サマンオサ
圧政の国サマンオサ
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った。そこは教会で、近くにはお墓があり、神父さんが人だかりの中央で何か話している。
「葬式か」
ユウリがポツリと言った。彼の言うとおり、黒い服は喪服で、ほどなく教会から棺桶が運ばれてきた。すると、棺桶を追うように、一人の女性と子供が飛び出してきた。そして女性の方が、遠くからでもわかるくらいの大きな声で泣き叫んだ。
「あなた!! あなた!! どうして私たちを置いて行ってしまうの!! お願い、ブレナン……、ああ、行かないで!!」
悲痛な叫び声がこっちまで響き、他人の私まで胸が締め付けられた。
そして近くにいた通行人の一人が、ぼそりと他の通行人と会話しているところを、偶然にも聞いてしまった。
「かわいそうに……。まだ子供も小さいのに、王様の怒りを買ってしまってあんなことに……」
「まさか王様の悪口を言うだけで死刑にされるなんて……。いつかおれたちもあんな風になっちまうんじゃないのか?」
「バカッ!! こんな人の往来の激しいところでそんなこと言うな!! 誰かが聞いてたらどうするんだよ!!」
そこまで言うと、二人はお互い面識もないのか、逃げるようにこの場を去った。
「ブレナン!! ブレナン!!」
「神よ! どうかその御慈悲で迷える魂をお救いください……」
「ねえ、母ちゃん。父ちゃんはどうしてあのハコの中に入ってるの? なんでおうちに帰らないの?」
いつまでも泣き叫ぶ奥さんと、必死に神への祈りを続ける神父、さらに父親の身に何が起こったのかわからず母親にひたすら尋ねる子供。
それを一部始終聞いていた私たちは、無言でこの場をあとにするしかなかった。赤の他人が彼女たちに対してかけられる言葉など到底見つからない。私たちにできるのは、必死に悲しみをこらえて通りすぎることだ。
「……ミオちん、涙と鼻水両方出てる」
シーラにハンカチを差し出され、しゃべることもできない私は無言でそれを受け取って拭いた。ごめんシーラ、あとで必ず洗って返すから。
「……想像以上にひどい国だな」
ユウリも忌々しそうに舌打ちをする。
国民がこんな辛い思いをしているのに、なぜこの国の王様はこんなことをするのだろう。会ったこともないが、だんだんと怒りがこみ上げてきた。
「ユウリ、用事が済んだら……」
「今はガイアの剣が優先だ」
にべもなくそう言い放つと、ユウリは歩く速度を早めた。彼の背中からは、近寄りがたい雰囲気が漂っていた。
その後私たちは、この辺りに母と息子の二人暮らしで住んでいる家が何処にあるかを周辺の人に尋ねた。もちろんサイモンさんの名は伏せている。そうして聞き込みをすること数十分。ようやく見つけた一軒の家は、身内に勇者と讃えられた人がいるとは思えないくらいのあばら屋だった。
さらに壁には、そこかしこに石か何かを投げつけられたようなあ
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