第3部
サマンオサ
圧政の国サマンオサ
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」
そう言って、シーラは照れたように笑った。こんなかわいい仕草、世の男性たちがされたらほぼ100%堕ちるだろう。
なんて考えてたら、ふと視界に入ったユウリの様子もなんだかおかしい。格闘場の看板を名残惜しそうに眺めている。
そして私は思い出した。彼がロマリアの王様姿となって格闘場に入り浸っていたときのことを。
お金に厳しいユウリはなぜか賭博には興味があるようで、私とシーラのやりとりを見てしまったからか、何かを言いそうになって結局我慢しているという複雑な表情を浮かべている。
そんな彼やシーラを若干可愛いなと思いながらも、私は心を鬼にして格闘場の前を通りすぎる。一瞬私たちを引き留めるかのような大歓声が聞こえてきたが、迷わず無視した。
そのあとも色々な人にサイモンさんに関する話を尋ね回るが、何故か皆一様に口を閉ざすか首を振るかの二種類に分けられた。この町に住んでいれば、嫌でも耳にするのではないかと思ったのだが、まるでその話題には触れてほしくないかのように頑なだった。
「おかしいね。なんで皆知らないって言うんだろ」
まるで勇者サイモンの存在をわざと消しているのではないか、というくらい顕著である。言ったらなにか罪にでも問われるのだろうか。
だが、これだけ人に尋ねていると、たまに口をうっかり滑らせる人もいた。
「そういえば西通りの二丁目に、サイモンさんの奥さんとその息子が住んでいて……」
「あんた!!」
道を歩いている老夫婦に尋ねたところ、旦那さんがついポロっと話した言葉に、隣にいた奥さんが慌てて止める。だが、そんな大事な言葉を聞き逃すほど私たちは甘くない。
「助かりました。ありがとうございます!」
「まっ、待ってちょうだい!! まさか城の兵士には言わないわよね!?」
「は? そんなこと言うわけないだろうが」
何を言ってるんだと言わんばかりに眉をひそめるユウリ。けれど夫婦は心底安堵したように息を吐いた。
「そ……そう。ならいいんだけど……」
「なあ、なんで皆そんなに怯えてんだ?」
ナギの言葉に、びくりと肩を震わせる夫婦。
「な、なんでもないんです。私たちはこれで失礼しますので」
旦那さんはそう言い残すと、奥さんをかばうようにそそくさとその場から去った。無理に引き留めて申し訳ないなと思う反面、あんなに露骨に脅えるのは何故なのかという疑問が膨らむ。
「取り敢えず、教えてもらった場所に行くぞ」
ユウリの言葉に従い、さらに町の人に西通りがどこかを尋ね、サイモンさんの家へと足早に向かう。旦那さんの話だと、どうやらサイモンさんではなく、奥さんと息子さんが住んでいるらしい。その二人だけでも会いに行くことにした。
「なんだろう、あれ」
その道すがら、通り沿いに黒い服を着た人だかりが見えたので、私は思わず立ち止ま
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