第二章
[8]前話
「紹介してもらったけれど」
「そうだったの」
「だからね」
それでというのだ。
「どうかな」
「養子を迎えるのね」
「どうしても子供が欲しいなら」
それならというのだ。
「どうかな」
「そうね」
熟考してだった。
美佳子は伸太郎と何度も話してそうしてだった。
養子を迎えることにした、まだ赤子で両親が蒸発して施設に保護されていた幸奈という娘を迎えたが。
二人で愛情を以て育てた、するとだった。
幸奈はすくすくと育って無事に高校そして大学を卒業して就職し立派な社会人となった、血はつながっていないが外見というか顔相や物腰、姿勢が母親そっくりになり。
育つ間反抗期もなく両親特に美佳子に懐いてだ、こう言うのだった。
「お母さんが母親でよかったわ」
「そう言ってくれるのね」
「いつも私のことを考えてくれて」
そうしてというのだ。
「大事にしてくれてるから」
「私はありのままね」
美佳子はこう返した。
「貴女を育てたけよ」
「そのことが嬉しいの」
これが娘の返事だった。
「私はね」
「そうなの」
「就職したし」
そうしてというのだ。
「これからは親孝行させて」
「そんなこといいのに」
「お母さんだからそうするのよ」
こう言ってだった。
娘は就職してからは両親特に美佳子に孝行をする様になった、やがて彼女は心ある人と結婚し子宝に恵まれた、そしてだった。
美佳子は歳を取っても誠実で優しいままの夫と共に娘夫婦それに孫達にいつも囲まれて満ち足りた人生を送る様になった。そしていつも幸せだと笑顔で言ったのだった。そんな彼女に周りはその性格だからだと言うのが常だった。
誠実には福がある 完
2024・4・26
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