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良い面構えだ。流石は将軍だな。」
バーグマンにそんな事を言われたがこのフランソワ戦役が終わったら俺は退職するから関係ない。俺は軍人でも誰かを率いることが出来る人間でもない。生き残りたいだけの卑しさを隠しきれない臆病すぎる勇気を持ったただの人間なんだ。それはこの戦いに動員された兵士たちも同じだろう。だから、一人でも多く故郷に帰してやりたいという野望を持ってるに過ぎない。帰してやりたいなんて上から目線すぎるな。俺は彼らに帰ってほしいんだ。フランソワ人も含めて。
無益な戦いの先にあるのは破滅だけ。戦いはただお互いにとても腹を空かせてしまう。パンとスープとチーズなどを子どもが不足なく食べれる社会を壊してしまう。それを俺はたまらなく悔しいのかも知れない。が、俺がこのフランソワ攻勢を凌ぎ切り、ノルマンディーされなければだ。尊い犠牲は出るがフランソワの精神的主柱が無くなり、島国も介入できなくなるだろう。
その為にこのヤン・ジシュカいや、肥田慎吾が多数の命を奪った罪で地獄の閻魔に拷問されるなら、この肥田慎吾……それを甘んじて受け入れてやる。これ以上大戦が続けばもっと多くの人が、動物が、森が死ぬ。可能性が死んでいく、手を取り合い助け合うはずの隣人が憎しみ合うのはとても悲しい話だろう。こんなに悲しい話はあるか?いや、俺には経験がない。
「バーグマン将軍、私ヤン・ジシュカは将軍ではありません。兵の奉仕者に成りたいのです。我々の一番の目的はフランソワに勝つことではなく、帝国臣民を守ることのはずです。兵士たちも帝国臣民だ。帝国臣民の彼らを棺桶に入れずに家に帰らせるのが最大の仕事でしょう。」
そう伝えるとバーグマンは高笑いをして、俺の肩を軽く叩いた。彼なりの返事なんだろう。
俺はそのままにバーグマンに笑いかけた。バーグマンは笑いて返してきた。今のうちにこの大陸における島国の作戦を終わらせるつもりだ。この戦いを終わりにさせる。
「バーグマン将軍、ここで防御を固めてください。小官は降下部隊と共に司令部と部隊を率いて囮になります。人が死傷するのだから誰よりも小官が前に出ます。大将首が無ければ食い付かないと言うのもありますが、何よりこれらは距離的情報伝達の遅れが致命的になるのです。ゆえに小官が向かいます。」
俺はそう言うと準備を始めることにした。この世に神が居なくてもサンタ・クロースが居なくても奇跡を起こそうとしたならば奇跡は起こせると彼らに教えてやる。
人の意志は何よりも強いのだと。窓を見ると雨はやんでいた。止まない雨はないと言うことがただ俺には嬉しかった。
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