34
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
乾いた音、建物の陰に隠れながら様子を伺い進む。何かあれば宝珠を全開にすれば首都警備網が発動して、別の部隊がやって来るはずだ。別の部隊が来たならばなかったことにはできないだろう。それに俺は謹慎喰らうかもしれないが全然問題ない。気にしないし、気にする必要もない。出世ができなくなろうがこれ以上偉くなるつもりもない。
「貴様ら!解散しろ!」
あの声のもとは夜目を効かせて術式を展開し、様子を見れば騒いでるのは中尉だ。四十は過ぎてるだろう。顔の皺は叩き上げに見える常に銃から手を離さないところを見ると鎮圧経験も豊富なのだろう。下手に出たら暴れまわる暴徒予備軍の数百人を前に一切引かない。たった20人程度なのにあの中尉がいるだけで、千人は居るように感じられる。そして、それに従う兵士たちも動揺してないのも見て取れる。人望に厚いのだろう。半身を引いた近くの兵士はいつでも中尉の前に飛び出せるように身構えている。乾いた音の正体は兵士たちが持ってる散弾銃の鎮圧用の岩塩弾辺りだろう。警告として撃ったのだろう。当たり前ではあるがこれは重要な主導権争いだ。
主導権は初回の動きで決まるものだ。気圧されないようにしなければならない。それに相手は興奮してるのだから、威圧して直ぐに動けないようにしないとならないのだ。ちょっとの隙を見せれば暴れまわるのが興奮した人間だ。
しかし、その後ろのあれは上等兵だろうか?まだ徴兵されてピカピカの新兵みたいなのがいる。それとも、この部隊の縁故で配属されたのか?あれは何かがあったら暴発しそうだが。
「私は南部や東部からやってきたこの団体、【帝国救済会】の代表のハインツ・ハーエルシュタインです!何故君等は陛下の臣民たる我々に銃を向けれるのか!工業地帯と農業地帯の住民は限界地点に達している!農地の機械化により焼け出された民を工業地帯の労働力として安く買いたたき、それでも余った臣民はこうして、行き場をなくして抗議しに来ただけである!帝国の繁栄を支えてきたのは我々一般市民であり、特権階級ではない!それにだいそれたモノを求めてるわけでもない。我々に加盟する者たちの家族や生活困窮者に1ヶ月分の食料とビール、臨時の仕事を求めているだけだ。こんなにも困窮しているのに首都では活気がある。我々の血の対価を貰うだけである。我々は明日生きなければ死ぬのだ。君たちにも農地や工業地に家族がいるだろう。同じなのだ。我々はただ安定した生活がしたかっただけなのに明日のジャガイモやパンにすらありつけない。議会の怠慢なのは間違いがないのだから抗議する権利ぐらいはあるはずだ。」
それはそうかも知れないが、相手の中尉が部下を抑えれてるだけで、そうじゃなかったら鎮圧されてると思うぞ。出る機会を伺わないとならない。じゃないと出た意味がなくなる可能性が高い。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ