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ないだろうよ。戦いは何も生み出さない消費の極致さ。人の人らしい感性すらも鈍らせる。単なるカタルシスを得たい連中の道具にされてしまうのさ。でも、やがていつかは人々が手を取り合える世界が出来ればもう少しだけ良くなるとは思うよ。それが千年後でも。」
本当に俺はなんでこんなことだけうまくいくのだろうか?早く、ターニャ・デグレチャフに全てを預けて歩き終えたい。大戦なんか起きてしまえば人が沢山死ぬ。俺は殺すのも殺されるのも御免被る。しかし、俺は‥‥。
『ここで終わるのは本当に良いのだろうか?』
もう一度、窓の外を眺める。この町並みが破壊されるのを俺は知っている。俺は卑怯者ではあるが卑劣になったわけでも二代目になったわけでもない。自分の手で何人の手を引っ張れるというのだ?社会に変革を、世界に勝利をもたらせるような立派な人間ではないのだけは確かだ。しかし、あのイスパニアの惨劇をこの旧大陸全土に広げて良いのだろうか?
「分かり合えた気になるのが一番遠いのかもな。憧れは理解から最も遠いとはよく言ったものだ。地の果てを夢見たあの大王やハンたちが何を見たのか今ならすぐわかるのに誰もそれを大事に思わない。」
声に漏れてしまっていた。横を見ると少佐がこちらを見ていた。誤魔化さないといけないだろう。流石にポエマーすぎる。
「大事に思わないからこそ、奪い合い取り合う。分かち合うこともなければ、助け合わない。戦争の神秘や揺らめきや騎士譚の如き名誉や誇りもイスパニア動乱でハッキリした。もはや、それらは失われたのだ。もうなくなってしまった。人々は個人の為なら引き金を引くのを躊躇せずに引くのさ。あの破壊された街、労働者革命として資本家を吊るした大衆も今はイスパニア連邦万歳と叫んでいる。それが得になると思ってるからさ。裏を返せば得になるのならば、故があるのならばまた暴力的な革命をするだろう。そういう世界に我々は突入してしまった。一般人と戦いは切って離せなくなり、一般人が個人的な利益により、国家や仲間に同胞に無秩序無規範に闘争を挑むようになったのだ。誰がそれのルールを守る?審判のいない、規律のない戦いの先は種の滅亡じゃないのかな?個人という価値を最大値にし過ぎて、個人が個人を押しつぶすそれを見て見ぬふりをする事なかれ主義。」
もう意味がわからないが少佐が聞いてくれているのでこれを押し通すしかない。あぁ、なぜこんなことにわからないからこうもなるのだろうか?地獄は目前だというのにいやに俺は冷静だった。
「それらがもたらすのは大きなケーオスとアノミーだ。社会や会社、家族地縁血縁、民族、宗教思想などの色々な柵があるが柵から全て外れれば自由だと推し進めた先にあるのは国家の滅亡だ。変様する社会で弱者は犠牲になっていく。自己責任による国家と自治体の共同体は破壊され、そ
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