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て、全権大使が次の発言に移ろうと疲れからか群衆から目を離した瞬間に男は新聞紙に包まれたものを全権大使に向けると次には甲高い乾いた音がこだました。
一発目は全権大使の肘、二発目は音に反応したあの臆病で動揺していた中佐に覆いかぶさられたが遅く肩、そして次に中佐のピッケルハウベが宙に飛び、4発目は中佐の胴体あたりを貫き、5発目は宝珠で飛び上がったこちらの防殻術式で弾き返される。衝撃で吹き飛んだ新聞紙の中身はモーゼルC96を改造したようなフルオートの拳銃だ。
全て耐えきると、突然の銃声にパニックになり大使館に入り込もうとする人々、それに対して大使館の前のバリケードを抑える大使館の中の人々。
犯人は慌てて逃げようとするが遅い。苦無のようにした鉄筋製のトレンチナイフをなげ、足を穿ち、予め倒れるだろうと予測した場所に向かい掴み上げると急上昇をし、そのまま真下に急降下と浮上を繰り返し、男は失神する。
そして、自害しないように口に布を詰めると腕と足を縛り、大使館の煙突に縛り付けた。
声が大きく、聞こえる。それに巨大な騒音もまるでなにか巨大なものが近づいてきているのを感じた。
刹那、ダキアの城から爆発音が聞こえた。そして、騒音がやがてある曲を奏でる。ワグナーだ。ワグナーの音楽だ。これはタンホイザーだ。爆音のタンホイザーが流れ出し、俺や人々が空を見上げると無数の落下傘が降下を繰り返す。
タンホイザーとは随分と皮肉が聞いている曲だ。次の瞬間にはもっと巨大な声がこだました。
『親愛なるダキア臣民に次ぐ。繰り返す、親愛なるダキア臣民に次ぐ。私は帝国軍、近衛軍団所属ハインリッヒ・フォン・バークマン特務魔導中将である。繰り返す。近衛軍団所属ハインリッヒ・フォン・バークマン特務魔導中将である。2日前に、我々はダキア大公フェルディナント殿下が“病気”により執務を断念され、本日をもって、退位なされて即時に戴冠されたキャロル2世の要請を我々は受けた。そして、今回の騒動を気に病み政権は快く総辞職を自ら志願し、“有事の際の臨時的に”アルトネスク上級大将、アヴーレシク前元帥、プーレゼン元帥による政権が組閣されたのを確認している。もはや、無意味である。我々は先遺隊であり、大公と政権の承認の元にダキア西部より、治安維持部隊が2個軍団規模で派遣され始めている。我々はあのロマノフスキー王朝の悲劇が諸君らに起こらないように我々、臨時コンドル軍団が派兵された。これにて終わりである。これより、要請にしたがい叛徒の掃討作戦を開始する。』
そして、次々に降下してくる帝国軍に少ないとはいえ一切のダキア軍が対空防御による射撃をしないことから皆、理解できた。
誰かが言った。
「終わったんだ!終わったぞ!」
その叫び声が街の中を包み込んだ
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