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かもと考えたがかぶりを振り、再び歩き出した。部屋に入ると荷物から怪文書たる論文を取り出した。決意は決まったあとは行動に移すだけだ。賽は投げられてしまったのだ。どう思おうとあとは、やることは一つだ。退学届をしたためて教官室に向かった。
教官に渡すがなんでも一教官では退学届は受理できないらしく、職員の詰め所に渡しに行ったら判断できないと言われてしまった。
「ままならないよな。なぁ、太陽。お前は輝いてるよな、どの世界でもきっと。」
疲れからか夕日につぶやくと俺はセンチメタリズムな感情に引き込まれて飲み込まれそうになる。それを忘れるように俺は校長室へ急いだ。とにかく急ぐ何も怖いものはない。なぜならばまだ戦争は遠く、5年ぐらい時間はある。それの内にやめられればいいだけで、前の問題行動で辞められるはずだ。予備役や不名誉除隊など何らかの形で軍から離れれば即刻、帝国を出ていくより他の道はない。それに資産形成は成功している。柵に纏わりつかれへばりつくなんてできない。
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しかし、この帝国もこれだけ暮せばこの石畳に少しは愛着が湧いてきたかもしれない。石の上にも三年だったろうかなと自嘲する。そして、校長室の前につくと身だしなみを整えた。せめて最後ぐらいはしっかりして見えるようにしないと。今日は初日だけどなと内心、笑い話だなとか思いながら、ノックをして声をかけてから、おそらくはこの音はマホガニー製だと思われる扉を開いた。
「なかなか早いじゃないか。筆頭、なんの用かな?」
校長はカイゼル髭を生やし、香油で撫で付けたパリッとした髪型でモノクルをかけている痩せぎすの長身であるが、椅子に座っていると立ってる時よりも小さく見えることから羨ましいことに足が長いのだろう。現代ならば俳優でもやってそうな御老体だ。手にしてるのは帝国紀と書かれたなめし革の表紙の本だ。
そして、机の上にはまるで民兵タワーのように積み重ねられた決裁書の束、そして転がる決裁印とインク壺の中で佇む上質な素材に見える羽ペン。机の上にある懐中時計には鷲とドラゴンが刻まれていた。そんな雑多な中を見てしまえば中小企業の神経質な社長に見えないこともない見た目にも思えた。しかし、抑揚をよく付けた声と意外と寛大な仕草とでタバコに火をつけ、モノクルを外してから用件を聞いてきた。
「失礼いたします。このような若輩者である小官は自主退学を願います。理由はこれらです。小官は一兵卒でありたいのです。」
満を持して取り出すのは怪文書の数々、これで俺の引退も安泰なはずだ。そして少なくとも予備役送りであろうこれが俺の考えた安全圏なのだ。そうするとヒゲを撫でながら校長はモノクルを再びつけ直し、出された怪文書の資料を捲ってる。この気配感じる、勝ったな。これは俺の、初めての俺
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