暁 〜小説投稿サイト〜
偽マフティーとなってしまった。
1話
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の目処がない俺は借金取りに内臓を売り飛ばされるんじゃなかろうか?

 ドゥンドゥンとステージの音がうるさい、財布がないことをバーテンに悟られないように見ると芸能大会が開かれていた。

 オエンベリは荒くれが集まっていたが、反面、酒と女だけでは娯楽は足りず、更に言えばこの街の自称マフティー様は賭博を禁じている。まぁ、守ってるやつは少ないが。だから表立っての娯楽には飢えていた。

「入賞商品が店がただのパスポートを1週間?」
 マン・ハンターが提示を求めるパスポートに似せた作りで皮肉ってるのがわかる。しかし、あれさえ取れば問題は解決する。

 俺は歩きだした。バーテンに大会に出ると告げて。店の裏口の店員に告げると控室に通されて小道具が置いてある。宴会芸で使うような全身タイツやおもちゃのバットなどだ。

 ひときわ目を引くのはハロウィンの仮装セットだ。ピエロに魔女によくわからない悪魔のようなもの、かぼちゃのマスク。
 どれも取るに足らない安物だ。

 出るのを決めたはいいが全然、何も思いつかない。俺は再び小道具を見回した。

 全身タイツ、おもちゃのバット、ピエロや魔女やかぼちゃのマスク。全身タイツ‥‥かぼちゃのマスク‥‥全身タイツとかぼちゃのマスク。アレしか思いつかなかった。着替えると店員がネタの題名をどうするのかと聞かれたので、こう答えた。

 連邦政府に反省を促すダンスと。

 かぼちゃのマスクに全身黒タイツの男が真面目にそういうものだから店員は笑っていた。やはりいける。

 あの曲の音源はないため、ヘッドセットタイプのマイクをつけてからかぼちゃのマスクをつけると舞台に立った。予想以上に時間が長く感じる、たかが2回踊ればいいだけだ。

「連邦政府に反省を促すダンスだ。」
 
 アカペラで歌いながら激しく手を振りステップを踏む、腕を動かし胸に当てたり、頭の上に手を構えたりする。たった30秒程度の踊りだ。

{IMG95257}

 最後に手をお辞儀のようにし、ゆっくりと頭を下げる。照明が暗転する。

 拍手や笑い声が溢れる。勝ったな。

 2回目は4分30秒フルに踊り、また笑いを勝ち取った。
 背景のマフティーの旗がより滑稽さを演出したのかもしれない。

「今回は‥‥連邦政府に反省を促すダンスが優勝です。」
 なんやかんやあり、金をなんとかできた俺は居候先に戻ることにした。ダンスが呼ぶ結果を考えもせずに。


 帰ってじいさんにこっぴどく叱られ、その後は漁をしたりなんだりで一週間は何事も無かった。


「はぁ。」
 ため息を吐きながらテレビを見ているとある特集がやっていた、オエンベリのマフティー特集として題が付けられた安っぽいコーナーである。そして、俺は吹き出した。


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