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渦巻く滄海 紅き空 【下】
八十三 シカマルVSペイン天道
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自分を本物だと認識したペイン天道に向かって、首を絞められながらも、シカマルは隠し持っていた忍具を投げつける。
それを、頭を軽く巡らすことで天道は容易に回避した。

空に吸い込まれるように天へ投擲される小刀。
それを白けた顔で仰ぎながら、ペインは袖口からナルを地面に縫い付けたモノと同じ杭を取り出す。

「どこに投げている?おまえ如きの力で、この俺に挑もうとは愚の骨頂だ」

淡々と杭を振り上げる。
その切っ先が今度こそ、シカマルの腹を貫く寸前、ペインの動きが止まった。

「…な、に…」

串刺しにしようとしていた杭の切っ先が、シカマルの腹に当たる手前で、止まる。

否、ペインの手が動かなくなったのだ。

身体を縛るその力には覚えがある。つい先ほど、身体を動かなくされた術。
しかし目の前のシカマルは印を結んでなどいない。

(何故だ…!?)

身体の動きが止まったペインの隙をついて、首を締め上げていたその手から逃れる。
咳き込みながらも再び、ナルのもとへ向かおうとするシカマルだが、折られた足のせいで上手く進まない。

片足を引き摺って懸命に駆け寄るシカマルを視線で追いながら、ペインは強引に己の首を巡らせた。
自分の動きを封じている原因を突き止めようと後ろを振り返る。

其処には、己の影に刺さる刃物があった。

先ほど、シカマルが自分目掛けて空へ投げた小刀。
それがチャクラ刀だと気づいたペイン天道は、ハッ、と輪廻眼を見開く。

(もしや真上へ投げたのは俺が避けるのを見越して…!?)

【影真似手裏剣の術】。
あらかじめ己のチャクラを吸引させ、影術の効果を付与させた武器で対象の影を射抜くことにより、動きを封じる術だ。

シカマルは首を絞められ、その苦しみから逃れる為に忍具を投げたのではない。
ペイン天道が回避する前提で、あえて真上へ投擲したのだ。空へ投げたチャクラ刀の飛距離と、ペイン天道の影へ落下するまでの時間を計算した上で。

「…なるほど。なかなかどうして頭が切れる」

珍しく称賛の言葉を口にし、ペイン天道は波風ナルのもとへ辿り着けたシカマルへ視線を投げる。
今まさに杭を抜こうとするその手へ、【影真似手裏剣の術】で動きを封じられているにもかかわらず、ぎこちないながらも強引に術を発動させた。


「【神羅天征】」




直後、地面が割れる。
シカマルの身体がナルから弾かれると同時に、ペイン天道の足元の地面が抉られた。


当然、ペインの影を射抜いていたチャクラ刀も、その衝撃で外れてしまう。
空高く弾き飛ばされながら、シカマルは自由になったペイン天道の姿を見下ろして、眼を剥いた。

(あの野郎…!地面を割ることでチャクラ刀を引っこ抜きやがった…!)

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