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渦巻く滄海 紅き空 【下】
八十三 シカマルVSペイン天道
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のは本意ではない。術を解くと、体の自由を取り戻したそいつは俺からすぐさま離れた。

逃げるかと思ったが、そいつは公園の滑り台の後ろにピャッと隠れて、そこからチラチラ俺を気にしている。
その様子に含め笑いを抑えながら、俺はまた声をかけた。

「俺は奈良シカマルってんだ。お前は?」



興味も生き甲斐もなに一つ湧かなかった。いつでも世界は無色透明にしか見えず、空ばかりを見上げていた。

俺の、無色透明な世界に一番先に彩りを加えたのは、金と青だった。

鮮やかな金の髪は、世界中の黄金を掻き集めてもその輝きを損ねない。
空よりも透き通った綺麗な青い瞳に、吸い込まれそうになる。


―――太陽を背に佇んだ存在は、俺の世界を照らす色鮮やかな光となった。

だから。









「……だから、俺の太陽をそう簡単に奪わせてなるものかよ」


独り言染みた決意を口にする。
目の前には木ノ葉の里を壊滅させた強敵。優秀な忍び達が束になっても敵わない存在。
『暁』のリーダーであるペインを前にして、奈良シカマルは拳を握り締める。


遠い昔、初めて波風ナルと出会った頃を思い出した。
四代目火影と同じ波風という姓から表立って危害を加えられない親に言い包められた子ども達から苛めを受けていた彼女はずっと、ひとりだった。
幼き時から暗部の監視がついていたが、その暗部自体もナルに対して好意的ではなく、落とし穴に落とされても誰も助けようとしない。
一部の暗部でさえそうなのだ。里の大人も陰口を叩いては、自分達の不満を小さな子どもにぶつけ、嫌悪する日々。

しかしながらこれでもまだマシなほうだった。
四代目火影の姓に変わる以前の四歳頃まではもっと酷い扱いを受けていたらしい。
それこそ、死んでもおかしくないほどの。

そんな胸糞悪い過去を乗り越えて、今の彼女がいるのだ。

シカマルと出会ったばかりのナルは現在の明るい彼女とは対照的に口数が少なく、物静かでおとなしい子だった。
同世代の子どもはまだしも、大人に対して特に怯えており、当初はとても歯痒いものを感じていた。

シカマルを始め、父であるシカクと母のヨシノが根気よく接し続けた結果、少しずつ心を開き始めてくれたのだ。
最初の頃は読み書きも得意ではなく、シカマルのことを「しか」と呼んで雛鳥のように後ろからついて回っていた。
そうして、チョウジ・キバ・いのと知りあって、本来の明るく無邪気な彼女になったのだ。

その彼女が今では木ノ葉の里を守ろうと必死で戦っている。
過去にどれだけ酷い目に遭って、理不尽な辛いことばかりその身に受けて。
それでも。

傷だらけで血だらけで地面に這いつくばりながらも諦めない、その瞳の青が。
昔から変わ
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