第一章
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人間の言葉もよくわかる
ふわりの飼い主である国崎家の息子である洋介は彼女に散歩の後でご飯をあげようとした、その時に彼女に言った。
「これから飯だぞ」
「ワンワン」
「たっぷりやるからな」
自分に顔を向けて目をきらきらさせているふわりに話した。
「待っていろよ」
「ワン」
ふわりは彼の言葉に応えて鳴いた、その彼女を見てだ。
ご飯をあげてだ、彼はその後で母の百合子に言った。
「ふわり俺達の言葉わかってるよな」
「そうよ」
百合子はその通りだと答えた。
「かなりね」
「そうだよな」
「犬はわかるから」
それこそというのだった。
「人の言葉がね」
「そうだよな」
「それでふわりはね」
彼女はというと。
「トイプードルは犬の中でも頭いいし」
「そうした品種だよな」
「その中でもね」
そのトイプードルの中でもというのだ。
「ふわりはね」
「特にか」
「そう、頭がいいから」
そうした娘だからだというのだ。
「もうね」
「俺達が言ってることをか」
「よくね」
「わかってるんだな」
「そうよ」
こう自分の息子に話した。
「だから変なこと言ったら」
「ふわりは傷付くか」
「いい言葉を言ったらね」
その時はというと。
「嬉しくなってね」
「逆に悪いことを言うとか」
「悲しくなるのよ」
「じゃあふわりの前の飼い主の」
「あの人達はね」
百合子はもう既に世を去って無縁仏として葬られ家は更地になった後土地が売りに出されている彼等のことを思い出して話した。
「子供が出来たらね」
「その瞬間にな」
「もう粗末に扱ったでしょ」
「飽きたおもちゃみたいにな」
「みたいじゃなくてね」
「そのものだったな」
「そう、それでね」
そうしたものと扱ってというのだ。
「かける言葉もね」
「無視かな」
「怒鳴るものでね」
「ふわりは傷付いたよな」
「騒音として扱われて」
そうしてというのだ。
「最後はいらないだったし」
「ふわりはその言葉も聞いたな」
「それでね」
「傷付いたよな」
「ふわりは本当によくわかっているから」
人の言葉をというのだ。
「かける言葉はね」
「選ばないと駄目だよな」
「あんただって罵られたら嫌でしょ」
「当たり前だろ」
一も二もない返事だった。
「そんなの誰だってな」
「同じよね」
「ああ」
当たり前という返事だった。
「俺だけじゃなくてな」
「人もそれは嫌でね」
「犬もか」
「そうよ」
その通りとだ、母はきっぱりとした口調で告げた。
「そのことはね」
「犬も同じで言うな」
「ふわりを傷付けたいの？」
「俺は人を傷付ける趣味なんて持ってないしな」
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