第二章
[8]前話
「それじゃあ一緒にね」
「行きましょう」
「そうしようね」
「足元には気を付けてね」
祖母は孫達が行くと決めたので忠告した。
「暗い場所だから」
「うん、そうだね」
「階段踏み外したらいけないしね」
孫達も確かにと頷いた。
「そうするわ」
「気を付けて行くよ」
祖母に確かな顔と声で応えてだった。
そのうえで二人で物置に入ってその隅の扉を開けた、扉には鍵がかかっておらずあっさりと開いた。
その下には木の階段がありそこを降るとだった。
「何か秘密のお部屋みたいね」
「そうだね、秘密のね」
兄は自分の後ろについて降りてきている妹に応えた。
「お部屋みたいだね」
「地下室だしね」
「うん、そう考えると何があるか」
「わくわくするわね」
「お宝とかあるかな」
「そうかも知れないわね」
兄妹でこうした話をしながら降りた、するとだった。
その部屋の中は只の和室だった、畳と紙の壁でだ。
他には何もなかった、美佐子はその部屋を持っていた懐中電灯で照らして見回してから兄に言った。
「別にね」
「何もないね」
「そうね、何があるかと思ったら」
「只の和室だよ」
「期待外れね」
「そうだったね」
兄妹でがっかりとして話した、そしてすぐに部屋を出て祖母に話すとこう返された。
「防空壕は空襲から避難するだけの場所だからね」
「何もないんだ」
「そうなの」
「ええ、考えてみればね」
「何があるかと思ったら」
「本当に何もなかったわ」
「そうなのね、ただもうね」
ここで祖母はこうも言った。
「そうした場所を二度と使わない」
「戦争が起こって」
「そうならなかったらいいわね」
「そうだよね」
「そうなったら大変だしね」
「そうなることを願うわ」
こう孫達に言った、そしてだった。
孫達におやつをあげた、そのおやつはおはぎだった。二人は両親と祖母と一緒にそのおはぎをお茶と一緒に楽しんだ。それから防空壕に行くことはなくなった。
謎の地下室 完
2024・4・21
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