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邪教、引き継ぎます
第三章
23.魔術師の望み
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なんでもできる魔法剣士。ロンダルキアの魔物に不覚を取る人間ではない。最悪、逃げるだけならいつでもできる能力はある。ローレシアから連れてきた荷物持ちの兵士にしても、選び抜かれた精鋭。初めてのロンダルキアとはいえ、そう簡単にやられるとは思えない。

 だから、罠にかかろうがなんだろうが、自分がここであの魔術師の首を取ればよい。
 それだけでよい。

 カインのベギラマやムーンブルクの王女・アイリンのイオナズンに比べれば、魔物たちの呪文の威力は数段劣っている。
 避けられるものは避け、避けられないものはダメージを覚悟で、ロスは進む。

 ついに距離を詰め、キラーマシン部隊までたどり着いた。
 力強く正確無比な斬撃で、魔術師までの道を塞ぐキラーマシンを一体、二体と、次々に関節を破壊して停止に追い込み、なおも進む。

「撃ち方やめ! これ以上は味方を巻き込む!」

 キラーマシン隊を抜け、シルバーデビルやデビルロード、バーサーカー、ブリザードたちを斬り飛ばし始める直前に、そんな指示が魔物の群れの奥から聞こえてきた。魔術師の声ではない。
 弓矢や魔法がぴたりとやんだ。
 代わりに、アークデーモンたちが一斉に三つ又の槍を構え、ロスの行く手を遮ろうと集まってくる。

「……」

 キラーマシンの統率が取れている。
 シルバーデビルが、負傷した他の魔物をすぐにベホマで治療している。
 デビルロードがメガンテで自爆してこない。
 バーサーカーが慎重に戦ってくる。
 アークデーモンたちの魔法と槍の構えが揃っている。

 何もかもが、ハーゴン討伐の旅では見たことがないものだった。
 それでも、進む。

 次から次へと差し込まれてくる、アークデーモンの槍。
 斜め後ろからやってきたアークデーモンの槍が、背部に刺さった。

「くっ!」

 深くはない。
 刺さった槍を掴み、抜き、力任せに振る。
 アークデーモンが飛ばされ、数体のバーサーカーが巻き込まれて一緒に転がっていった。

「……」

 前方を見る。
 遠い。
 狙いは魔術師フォルただ一人。
 だが、魔物たちの隙間からわずかに見えるその姿が、遠い。遠く見えた。

『今後のロンダルキアのことは、ロンダルキアに任せていただきたいのです』

 アークデーモンを次々と斬り飛ばしていく中、悪魔神官の杖を持った魔術師の言葉が反芻(はんすう)する。

「できるのか! 君に!」

 ロスは大きな咆哮(ほうこう)をあげ、剣を振りかざしながらさらに突進していった。
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