第100話 半端者
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テミスの首飾りよりも低い軌道に位置して、箱型というよりも肋骨構造の筒のような形状をしていて、内部では時折火花が散っているようで、青白い光チラチラと光っては消えを繰り返している。シャトルはゆっくりと旋回しつつドックへと近づいていくが、接近するにしたがってその巨大さが嫌でもわかる。
この第一軌道造兵廠の造船ドックは、数多ある軍用ドックの中でも特別だ。容積だけで言えばこれより大きなドックは幾つもあるが、アイアース級大型戦艦を建造しているのはココだけ。五つ並んだ船渠は、定期検査で使用される一つと、ローテーション任務から帰還した後の補修や改修に使用される二つ、そして新造用の二つで構成されている。アイアース級の建造に必要な期間は約一年。費用や資材等で支障がなければ、都合半年に一隻新造されることになる。
船渠外周を一周してからドックの管理棟に移乗すると、そこは軍事施設でありながらも軍服ではなく作業服や簡易宇宙服を纏った造船マン達の占領地だった。バウンスゴール大佐や俺達を見てマトモに敬礼する人間はほとんどいないが、誰も彼も大佐を見て軽く指を米神に当てたり小さく頷いたりと何らかしら軽く挨拶していく。バウンスゴール大佐も、忙しそうにしている彼ら彼女らに声をかけることはせず、小さく手を振って応えるのみ。
「この雰囲気はいいですね」
アイアース級の艦橋そのものを利用した第五船渠管理棟の頂上(つまり司令艦橋部分)で、アイランズが目の前で建造されているアイアース級の艤装に目を奪われている時、俺がバウンスゴール大佐の後ろから囁くと、大佐は褒められた子供のようなニコニコ顔で振り返った。
「軍事施設らしからぬ砕けた感じで、実のところあまり好かれない人も多いんですが、ボロディン中佐はやはりボロディン少将のご子息でしたね」
「グレゴリー叔父……あ、いや少将閣下の?」
「叔父さんのお陰ですよ。もう七年も前ですかね」
七年前。大佐が技術少佐としてここに配属された時、フライトUとなっていたアイアース級の建造が、部材納品の遅れや用兵側からの注文による工数の増大で想定上に遅れ、管理者も工員も精神的に追い詰められていた。造兵廠内の統制は乱れ、それが過度の綱紀粛正を招いてしまい、さらに雰囲気が悪くなるという悪循環の繰り返し。スケジュールの遅れを取り戻すべく無茶をして、死亡事故も起きてしまった。
事故をきっかけに統合作戦本部は管理する施設部上層部の入れ替えを決断し、グレゴリー叔父は新任の施設部次長として造兵施設の統制回復に送り込まれた。
グレゴリー叔父は着任早々、軍管理者・軍属・協力業者・工員・関係者全員をここに集めて、今後一切施設内のおいては一切の敬礼と暴力を廃止すると告示した。強硬に反対したベテラン主事を三日で更迭して管理側の統制を手中に収めると、圧倒
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