第100話 半端者
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乗して二時間の間も、窓側に座らせたアイランズが退屈しないよう造兵廠関連だけでなく、窓から見える軌道上にある軍事施設を次々と平易な言葉で語る姿は、まるで超一流のバスガイドだ。
「あれはアルテミスの首飾りの一一番衛星になりますね。先月定期メンテナンスが終わったばかりですから、流体金属も綺麗ですな」
シートの背もたれの向こうで話すバウンスゴール大佐の言葉に、アイランズの後ろに座る俺も首を傾けて窓の外を見る。恐らくは数十キロは離れているであろうが、キラキラと星空を反射させつつ三日月を描いている。
「流体金属が綺麗、とは?」
実家が金属工業なだけあって、アイランズはすぐに反応した。
「アルテミスの首飾りは微小ながらも重力を持った『衛星』になります。すると衛星軌道上のデブリを引き寄せてしまうんですよ。厳密に観測管理されている人工デブリとは違って、隕石の破片やガスなどの天然由来のものも引き付けてしまうのです」
あれ? じゃあカストロプ公爵領にある『従妹たち』はどうなるんだ。確か小惑星帯の中に仕込んであったはずだが……
「大佐。であるとすると、小惑星帯の中にアルテミスの首飾りを設置するのは大変なことになるのでは?」
「ボロディン中佐の言う通りです。付近に大きな小惑星や密度の高い小惑星帯や惑星環があれば、せっかくの全球体構造なのにわざわざ火線の死角を作ってしまいますから意味がありません。岩石密度の低い惑星環もダメですね。数ミリの氷や岩石の粒なら集塵機のように吸い取ってしまいます。メンテで良い事なしですよ」
流体金属層に異物が入り込むと、内部から飛び出してくる兵器層(砲塔やミサイル発射口)の障害となりうる。イゼルローン要塞のようにでかいモノであれば、対流式の半自動的なクリーナーを設置できるだろうが、小さいアルテミスの首飾りは兵装側に内部容積を獲られていて小規模なものしか付けられず、時折『詰まって』しまうらしい。
逆に比重が流体金属より軽いモノであれば表面に浮き上がり、センサーやレーダーの障害になるとのこと。正直どれだけ汚れるか俺にはまったくわからないが、カストロプ公爵はどれだけメンテに金を使ったのか、想像するだけでバカバカしくなってくるし、公爵の立場につけ込んでそういう商品を売りつけたフェザーン商人(この場合は自治政府か?) の悪辣さには虫唾が走る。
もしイゼルローン回廊の出口に大量設置した場合はどうなるのか。移動能力を付けた上で戦列歩兵よろしく、順繰りに膨大な数のメンテナンスをしていかねばならないということになるのだろうか。その費用もまた膨大なものになると考えると、やはり設置宙域の選定が重要になってくる。
「そろそろ到着ですね。下の銀色の箱が複数繋がっているのが、軌道造兵廠の造船ドックになります」
それはアル
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