第100話 半端者
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イネセン第二民間宇宙港に行ってほしいと言われ、携帯端末に送られてきたチケットを見た民間宇宙港の係員の顔は真っ青になってファーストクラスラウンジの『裏』に俺を連れて行き……そこにはペニンシュラ氏が待っていたのだった。
「しかも委員長クラスじゃないと手配できないVIPルームが使えるとは、君もなかなかやるな」
「ははははは」
「スーツで来るように君の秘書官君が言っていたのが不思議だったが、これならば仕方ない。到底サマージャケットで来られるような場所ではないからな」
チェン秘書官の行動に正直俺は業腹なのだが、アイランズが気持ちよく手放しで『俺の手配』を褒める以上、この場で違いますと言っても、アイランズが気を悪くするだけであんまり意味がない。
「おそらくこれっきりになるとは思いますが……」
「そりゃあ、そうだろう。君。私だって身の程は知っている。正直、このとおり足が竦んでいるんだよ」
僅かに貧乏ゆすりしている足を指差すアイランズの顔は、笑いながらも微妙に引き攣っている。確かに普通の業務個室にソファと赤い絨毯が敷いてあるだけの軍用宇宙港のVIPルームとは、内装の素材といいデザインといい装飾アートの品の良さといい、まるで格が違う。これでさらにそれなりの経験のあるアイランズですら招待を喜ぶホテル・ミローディアスの予約まで取ったチェン秘書官の気合の入れようは一体何なのか。訳が分からない。
もちろんシャトルの席はファーストクラス。ビジネスクラスやエコノミークラスの乗客に見えないように最後に乗り、民間軌道ターミナルでは最初に降りると、こちらのVIPルームでいつも通りの装いのチェン秘書官が待っていた。
「チェン秘書官。これはどういうことだ」
ニコニコ顔で珈琲を飲んでいるアイランズをよそに、俺はチェン秘書官を廊下に連れ出して問い詰めると、彼女は普段通りの笑顔で答える。
「いまさら済んでしまったことをとやかく言っても仕方ありませんわ。起こってしまったことは最大限利用なされるべきです」
お前の親戚、もしかして回廊の向こう側にいるんじゃねぇの、と思わず口から零れそうになる。だが済んだこととか言えるような話ではない。シャトルに乗っている間に携帯端末で調べたミローディアスの一番安いクラスの宿泊費ですら、俺の月給の三分の一は消し飛んでしまう。
アイランズにシングルルームみたいな部屋を案内するとは思えないので、俺の月給がすっ飛ぶ額どころではない金が動いている。そんな予算が国防委員会参事部にあったかどうかもさることながら、それだけの金をチェン秘書官はどこから引っ張ってこれるのか……
「ラジョエリナ氏か?」
「サンタクルス・ライン社はユーフォニア・HDと持ち合いしてますものね」
答えになっていないが、顔は正解ではないと言っている。
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