第100話 半端者
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……」
前世の俺だったら、間違いなく喜んで行っただろう。しかしこちらの世界に転生して士官学校からこのかた宇宙戦闘艦の艦橋にこの身を詰めてもう何年になるか。満点の星空を見て美しいと思うより、まだ仕事中かよと思うようになってきた。司令艦橋でリクライニングして寝る余裕なんて、時間的にも精神的にも立場的にもない。
ちなみに艦橋に誰もいないと思って手を伸ばして星を掴もうなんて真似していたら、ブライトウェル嬢がすっとんできて『コーヒーでよろしいですか?』と言われただけだった。
ましてそんな満天の星空の艦橋で低重力なんて状況は、どう考えても戦闘中における重力制御装置の故障を疑うような事案だ。艦の僅かな動きでペチャンコになるかもしれないと想像するだけでとても落ち着けない。
しかし地上勤務のチェン秘書官みたいな民間人には、やはり宇宙空間は興味深い場所なのかもしれない。チェン秘書官の瞳はいつもより妖しく輝いている。
「今なら同盟最高の女性スタッフが二四時間体制で、中佐を心の底からお寛ぎいただけるようおもてなしいたしますよ?」
「いやいや大丈夫です。自分で工廠併設の宿泊船を予約しますよ。チェンさんには予算の時、だいぶご苦労をおかけしましたからせっかくです。ゆっくり休んでください。で、有休はいつからとれそうですか?」
情報機関の女性と二四時間一緒に休暇など、一体どんな罰ゲームだよと固くお断りしたが、オープンファイルタイプの端末を開く一瞬だけ、チェン秘書官の顔が夜叉に見えたのは気のせいだろうか……
「それでは一〇日後から四日間はいかがでしょうか?」
「結構です。その旨をエングルフィールド大佐とエベンス・ベイ両少佐にお伝えください。少佐達も特に急ぎの用がなければ適時休暇を取るようにと」
「承知いたしましたわ。中佐」
いつものように笑顔を浮かべつつも、小さく頷く程度に変わったチェン秘書官のお辞儀に、俺は危うさを感じていなければなかった。たった数ヶ月。自分の仕事に集中して、手配や手続きもろもろをチェン秘書官に任せっぱなしだったツケは、一〇日後に支払わされることになる。
「まさか君のほうからミローディアスに私を招待してくれるとは思わなかったよ」
予定通りハイネセン第一軍事宇宙港に向かった俺が、軌道軍事ターミナルまでのシャトル便に乗ろうとゲートを潜ろうとして、チケットの無効で止められた。制服を着ている俺が中佐と分かって丁寧な口調で受け答えしてくれた係員の曹長曰く、四日前にシャトルのチケットのキャンセルが『俺のオフィス端末』からされていたということ。
やった犯人は一人しか考えられないので、即座にチェン秘書官に空港備え付けのヴィジホンで連絡したら、平身低頭の体で謝罪され、既に代わりのシャトルとチケットを用意しているのでハ
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