第一章
[2]次話
鍛えられた妹
格闘家の光山実夫は四人の弟と三人の妹がいる、両親も弟や妹達も格闘技をしているが末っ子の琴子だけはまだだった。
だが実家に帰った時にだった、彼は妹の右手の甲を見て言った。
「えらく傷があるな」
「最近トレーニングはじめたの」
小さくあどけない顔で黒目がちの澄んだ目で黒髪をおかっぱにしている妹はすぐに答えた、見れば実夫も同じ目で引き締まった唇をしている、黒髪はスポーツ刈りにしており身長は一八三で鍛え抜かれた身体をしている。格闘ジャンルはシューティングだ。
「格闘技のね」
「えっ、お前まだ幼稚園に入ったばかりだろ」
「お兄ちゃん達もその頃からはじめたわよね」
「そういえばそうか」
兄も言われて頷いた。
「俺もな」
「そうよね」
「それでか」
「うん、トレーニングしてね」
そうしてというのだ。
「お兄ちゃんやお姉ちゃん達と組手もしてるの」
「そうなんだな、しかしな」
ここで実夫は考える顔になって言った。
「あまりな」
「あまり?」
「無茶はするなよ」
こう言うのだった。
「組手よりもな」
「走ったりするの」
「サーキットとかな、それもな」
そうしたトレーニングもというのだ。
「あまりな」
「するものじゃないの」
「子供だからな、激しいトレーニングはな」
そうしたものはというと。
「子供のうちは体格向上に影響が出るからな」
「駄目なのね」
「そうだ」
その通りだというのだ。
「だからな」
「今は」
「無理をしないでな」
「じっくりとなの」
「焦らずな」
「すぐに強くなろうって思わないの」
「今はな、やっぱり体格はな」
これはというのだ。
「必要だからな」
「格闘技に」
「だからな」
それでというのだ。
「いいな」
「お兄ちゃんもそう言うのね」
琴子はここでこう言った。
「お父さんもお母さんもね」
「そう言うだろ」
「お兄ちゃん達もお姉ちゃん達もね」
「そうだ、本当に今はな」
「焦ったら駄目なの」
「強くなるのはな」
それはというと。
「毎日お父さんとお母さんが言う通りにしてたらな」
「強くなるの」
「そうだ」
一言で答えた。
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