第3部
サマンオサ
新たな旅路
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!」
いつの間に辿り着いたのか、サマンオサの兵士に呼び止められた。
見渡すと、大きな塀が町を囲うように伸びており、目の前には町に入るための唯一の手段である大きな扉がぴったりと閉じられている。
「ここはサマンオサだ。我が国は他国からの入国者を制限している。相応の理由がない限り入国することはできない」
どうやらよっぽどの理由がなければ入れないらしい。だが逆に考えると、理由があれば通れると言うことだ。
「それならここに、ポルトガ王からの書状がある。俺たちはこの手紙を城に届けるためにやってきた」
「手紙だと?」
そう。ユウリがサマンオサに向かう直前にポルトガに言った理由と言うのが、この手紙だった。
サマンオサに入国できる全うな理由を作るために、ユウリはポルトガ王に頼んで手紙を書いてもらったのだ。黒胡椒の件もあり、ポルトガ王は快く引き受けてくれた。それにもともとサマンオサの王とは親交が深かったが、十年以上音信不通だったサマンオサ王の様子を気に留めていた。そこをユウリが助言したことで、ポルトガ王はサマンオサ王への手紙を認めた。つまり、本物のポルトガ王からの手紙を正式に預かることができたのだ。ここに来るまでの間にユウリに聞いただけなので詳細は彼にしかわからないが、これだけでも随分大変だっただろう。
「ちょっと貸してみろ」
兵士がユウリの手にある書状に手を伸ばす。だが、ユウリはその手を振り払うように遮った。
「これはサマンオサ王に宛てた大事な手紙だ。本人に渡すまでは誰も触れるなと仰せつかっている。そもそも、一介の兵士にその権限があるのか?」
「ぐ……」
ユウリの正論に、ぐうの音も出ないサマンオサの兵士。そして無理矢理納得したのか、苦い顔で扉の閂を開けた。
「……わかった。ならば通そう。ただし、国内で少しでも目に余る行動を起こしたら、それ相応の罪を負ってもらうからな」
厳しい口調でそう言うと、兵士は早く行けと言わんばかりに顎で促した。ロマリアの兵士の対応とは雲泥の差だ。
ユウリも文句を言いたそうな顔をしていたが、騒ぎになるのを懸念したのか、黙って扉をくぐった。
「ミオちん、行こっ♪」
シーラに手を引かれ、私もサマンオサへと入る。後ろにいるナギもやっとまともな食事にありつけると、心底安堵した顔であとに続く。
けれどまずは、サイモンさんが何処にいるか探さなければならない。逸る気持ちを押さえながらも、私は未知の国サマンオサへと一歩踏み出した。
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