第3部
サマンオサ
新たな旅路
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配に気づいたのかすぐに顔を上げた。
「お前らがのんびりしてるから待ってたんだ。早く行くぞ」
「え? 別にそんなにのんびりしてたわけじゃ……」
よく見ると、顔が若干青白い。もしや旅の扉酔いが復活したのでは、と察した私は、これ以上何も言わないことにした。
壊れかけた扉を通り抜けて外に出ると、そこは鬱蒼とした森であった。長い間人の往来が殆どなかったのか、街道はいつしか無造作に生え散らかした草木に覆われ、獣も通らない道となっている。
「これは……野宿確定だな」
ユウリの言葉に、三人は無言で肯定した。その言葉通り、延々と続く森は先へと進もうとする私たちの足を鈍らせ、時折襲いかかる魔物の容赦ない攻撃に辟易した。おまけに地理的な理由からか、時々水瓶をひっくり返したような大雨が容赦なく降り注ぐ。それが結構な頻度で訪れるので、なかなか思うように進めないのであった。
それでも消えかけた街道を調べながら歩くこと五日。大分歩いてきたと思うのだが、もうそれぞれの携帯食料は残り少ない。なんとか現地で食料を調達してきてはいたが、それでも追い付かない。
空腹と慣れない土地で、私の疲労はアープの塔以来の極限状態を迎えていた。
その時だ。木の実を探しに一人離れた場所にいたシーラが突然声を上げた。
「ねえ皆! これ見て!!」
彼女の切羽詰まった声に、私たちは急いで集まる。シーラが指差しているのは、一枚の古ぼけた看板だった。
「この先、サマンオサ国……?」
ユウリが目を凝らしながら読み上げたのは、サマンオサの看板だった。あまりにも長い間ほったらかされていたのか、字が殆ど見えなくなっているが、確かにそう書いてあるように見える。
「よくやった、シーラ!!」
ナギが諸手をあげて喜んだ。けれど、それ以上に喜んだのはシーラである。
「わーい!! やっとお酒が飲める!!」
あ、そっちなんだ。相変わらずなシーラに、疲れた私も笑みがこぼれる。
「気を緩めるな。ここで迷ったら俺たち四人とも野垂れ死ぬ可能性もあるからな」
はしゃぐ二人を横目で見ながら、ユウリが釘を刺す。そうだった。こういうときこそ気を引き締めないと。
けれど、街道にそって歩くにつれ、先ほどと同じような看板がちらほらと目につくようになった。どうやら本当にサマンオサは近いらしい。
やがて広大な森を抜け、見通しのいい草原に出た。遠くを見ると、わずかにお城のような建物が見える。
「あれが、サマンオサ……?」
だが、私の呟きなどもはや誰も聞いておらず、皆脇目も振らずお城に向かって駆け出している。極限状態なのは私だけではなかったのだ。
私も急いで皆の後を追いかける。途中魔物が襲いかかろうとしていたが、気迫に圧されたのか、結局戦闘になることはなかった。
「おいこら、止まれ!
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