第二章
[8]前話
「ケーキとか和菓子とかね」
「給食のデザートより豪華よね」
音無の家の家庭事情から話した。
「そうよね」
「そうだけれど給食のデザートって美味しいよね」
音無はこうオレンジに返した。
「無性に」
「そうね、言われてみたら」
「それでなんだ、給食だってね」
「無性に美味しくて」
「どうしてかわからないけれど」
「それで給食は第一の楽しみで」
「デザートが特になんだ」
まさにというのだ。
「本当にね」
「無性に美味しく感じるから」
「そうだよ、だからね」
それでというのだ。
「これからもね」
「食べるのね」
「お昼もね」
こう言って実際にだった。
音無はこの日の給食も楽しみ特にデザートのワインゼリーをにこにことして食べた、それが彼の義務教育時代の最大の楽しみで。
高校大学を卒業し家業に入る様になり結婚して子供ももうけたが。
久し振りに会って今はチューリップ農家を結婚した夫と共にしているオレンジ、苗字が若田部になった彼女にそのチューリップの球根を観つつ言った。
「給食って無性に美味しくて」
「デザートが特にね」
「美味しいのはどうしてかな」
「子供の頃に食べていて」
そうしてというのだ。
「子供の口に合う様にお料理していて」
「それでかな」
「しかも子供っていつも身体動かしてるから」
「その分お腹空いて」
「美味しんじゃない?」
「そうかな」
「そうじゃないかしら、けれど私も振り返ると」
どの球根を買おうか見ている音無に話した。
「確かに給食美味しかったわね」
「特にデザートが」
「無性にね、忘れられない味だよ」
「そうだね、また食べたいね」
「もう無理だけれどね」
大人になった今はとだ、彼女はこう言ってだった。
音無にお勧めの球根を紹介した、彼はそれを買って帰って夕食後のデザートにワインゼリーを食べた。それは美味しかったがやはり給食の時程ではなかった。そのことを少し寂しく思うがそれは誰にも言わなかった。
給食のデザート 完
2024・4・18
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