第十三話 無理はしたら駄目その八
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「オレンジね」
「ビタミンね」
「風邪にはビタミンもいいからね」
だからだというのだ。
「お昼の後で佐京君が買ってきてくれたの」
「そうだったの」
「自転車でスーパーまで行ってね」
「そうしてくれたの」
「そうなの。オレンジも切るから」
デザートであるそちらもというのだ。
「だから楽しみにしててね」
「それじゃあね」
「オレンジっていうか柑橘類もいいわよね」
真昼はカレーが入っている鍋の前に向かいつつ話した。
「ビタミンあるしね」
「美味しいしね」
「やっぱりビタミンも取らないとね」
カレー鍋に火を点けつつ話した。
「駄目よね」
「そうよね、ただ今日のカレーも」
「お野菜たっぷり入れてるわよ」
「林檎も擦って入れてるから」
「カレーもよ」
「ビタミン多いわね」
「ええ、身体の調子が悪いなら」
そうした時はというのだ。
「本当にね」
「ビタミンも大事よね」
「蛋白質も大事だけれど」
「ビタミンも摂って」
「健康になってね」
「治すことよね、お食事はたっぷりとバランスよくね」
「体調の悪い時は特にね。あと夜空ちゃん休んでて」
姉は妹にこうも告げた。
「今はね」
「風邪ひいてるから」
「そう、自分の席に着いて」
テーブルのそこにというのだ。
「それでね」
「ゆっくりすることね」
「あったまったらカレー入れるから」
「そうしてくれるの」
「ええ、あと佐京君と白華ちゃんはお部屋にいるから」
それぞれのというのだ。
「私が呼ぶからね」
「私はいいのね」
「体調が悪い時は無理をしないことよ」
くれぐれもというのだ。
「だからね」
「今はなのね」
「ゆっくりしてね。それで食べ終わったらね」
「カレーもオレンジも」
「お薬飲んでお風呂に入って」
そうしてというのだ。
「またね」
「寝ることね」
「もうとことんね」
それこそという口調で言うのだった。
「寝ることよ」
「それが一番よね」
「風邪にはね。森鴎外さんも言ってたのよ」
明治から大正にかけて活躍した文豪であった彼もというのだ。
「風邪の時はじっくり寝なさいってね」
「言ってたのね」
「とんだ藪医者だったけれどね」
「脚気のことね」
「そう言ってたのよ」
「藪医者だと駄目よね」
「それはそうだけれどね」
真昼も否定しなかった、医師即ち陸軍の軍医としての彼の実績はお世辞に言ってマイナスでしかなかったのだ。
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