005 コーヒーミル
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って、この人?」
「・・・うん、そう。」
男は、デスクのほぼ正面でデスクに向かって右側に足を投げ出して座っている。
私もデスクの反対側で、備え付けの回転椅子を回してデスクの右側に向かって座っていた。
そうしないと、男の顔を見る誘惑に負けそうだったからだ。
「あきれた・・・本当にこの人が誰なのか、気づいていないの?軍事マニアのくせに。」
アメリアの声が、心持緊張しているように聞こえたのは気のせいだったと思いたいが、さて。
「知るわけ、ないだろう。この男も、どこかの軍事マニアなのか?」
と、言いながら、“誰だっけ?”と頭の中の人物ファイルをめくり始めた。
そういえば、どこかで、過去の歴史上とかではなく、もっと近い・・・。
いつの間にか横を向いて座っている私の正面に回ってきていたアメリアが、言った。
「あの、“クリス・アリジン”と一緒に“船”を発見した、、“ウォルフ・ザ・シルバー”よ。・・・お久しぶりですね、ウォルフ?」
盛大にむせた。コーヒーをこぼしこそしなかったが、すぐには回復しなかった。アメリアが背中をさすってくれる。
「・・・・ありがとう、もう大丈夫。」
椅子に座ったまま身をかがめ、口元をハンカチで拭った。
「仕方がないさ、博士。教授は博士に会ったときも気づかなかったんだろ?ま、そういう男なのさ、教授は。」
このやろう、何だって?何で・・・。
何で、伝説のウォルフが、こんなところにコーヒーを飲みにくるんだ?
一体、何が、どうなって・・・まあ、いい。
「・・・どうかね、コーヒーのほうは?」
腹に力を入れ、背筋を伸ばして座りなおした私は、男に向き直った。
「うん、うまい。楽しませてもらっている。」
ひとつうなずいた私は立ち上がって、アメリアを引き寄せた。
「知り合いのようだが、改めて私のほうから紹介しよう。」
「知ってる。教授の同居人以上、恋人未満のアメリア・ジョ−スター博士だ。“最も納得できないカップル”は、アカデミーの外でも有名だぜ。」
「いや、ちがう。恋人で婚約者の、アメリア・ジョースターだ。近い将来、私の妻となる人だ。」
アメリアの肩に回した手から、彼女の緊張が伝わって来た。
「・・・ニコラ。」
ゆっくり、恐る恐るというように、アメリアは私の方に顔を向けた。
アメリアの視線が私のに充分に絡まると、アメリアの体から緊張が解け、暖かく、やわらかくなっていった。
「この数ヶ月、本当に楽しかった。特にこの二ヶ月足らずは、毎日がデートのようだった。もっと前に心は決まっていたんだが、なかなか言い出せるものではないんだな、こういうことは。」
アメリアが、私を見つめながら小さく、数回、首を横に振ってくれた。
「だから、決めたんだ。次にこの男が来てコーヒーを飲ませたときに“うまい”と言わせれたら、いや、絶対
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