暁 〜小説投稿サイト〜
とある銀河の物語
005 コーヒーミル
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出した。
思いがけないものを目の当たりにして、ついしばらく見とれてしまった。
「うーん、おもしろい・・・・はじめて見るなぁ・・・・」
「とりあえず、好きなだけ検分してくれてかまわんよ。」
手にとって見た。
縦横20センチくらい、高さは25センチくらいか。外見からは木製の部分が多く見えるが、持った感じは意外に重い。
中に金属が何かを使っているのだろう。木箱の上に小さななべ状の金属部分があり、天辺にハンドルが付いている。
木箱の部分に小さな引き出しがあり、なべ状の部分には引き窓もある。
「ここからコーヒー豆を入れ、このハンドルを回して挽いて、この引き出しに溜める、と言う感じか・・・」
男がデスクの上に小さなガラス瓶を置いた。それを手に取り、ふたを開ける。
なかなか、出来のいいコーヒー豆が入っていた。
いつの間にか予備のイスをデスクの前に持ってきて、男はくつろいでいた。
ふむ、これとこれを使って、コーヒーを入れてみろと言うことだな。ようし。
「上の金属部分はひねれば外れる。中のグラインドする二つのパーツの隙間を調節して、粗引きにするかエスプレッソにするかお好み次第なんだが、ま、何度か使ってみないことにはわからんかもな。」
「その言葉、挑戦と受け取ったよ。」
一発で、最高のコーヒーを入れてやる。そう思った。
いわれたとおり、分解し、調節し、木箱にはめ直す。
ビンの中のコーヒーは、正確な銘柄はわからないが、色と香りからミディアム・ローストのPea Berryだ。粗引きになり過ぎない程度にカンで調節した。
手の平に壜からコーヒー豆を落とす。まだけっこう暖かい。いったい何処でローストしてきたのだろう?
男の顔を見た。男は、ただ肩をすくめただけだった。

入れたコーヒーは、芳醇と言えるほどの香りを漂わせた。
きれいにすすいだ自分のカップに注ぎ、男に差し出す。なぜか自分は紙コップになってしまった。
カップを手に取った男は、しばらく両手で覆うように持ち、口に持っていこうとはしなかった。
香りを確かめているのかな?
一口、味わってみた。
柔らかくて深い、そんな印象を受けた。
「このミルだから出る柔らかさだと思うんだが、どうかね、教授。」
「そういうからには、俺はまずまずの入れ方をしたと言うことだな?」
男はカップを上に掲げ、乾杯のしぐさをした。そのまま残りのコーヒーを飲み干す。
「しばらく好きに使ってくれ。また来るよ。」
そういって、名も名乗らずに男は出て行った。

私は完全にこのミルにはまってしまい、家に持って帰っては使い、毎朝オフィスにもってきていた。
いつあの男が来るか判らないので、常にオフィスに持っていかなければと思っていたのだ。
ミルのほうは、丁寧に時間を掛けて分解し、クリーニングした。
洗剤なんて
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