暁 〜小説投稿サイト〜
とある銀河の物語
005 コーヒーミル
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くりとお湯をかけていく。
「コーヒーポットに溜まったコーヒーの表面に、小さなコーヒーの粒が踊ってるだろう?」
ドリッパーから落ちるコーヒーが水面に当たったときに弾けて、なぜか小さな液粒となって水面を踊っている。
結構大きな粒が踊るときもある。
「俺はこれを見るのがなんとなく好きでな。」
「なんか、コーヒーで出来た宝石みたいですね。」
「うちの娘と同じ事を言いやがる。」
「この家の息子になりたいなんて言いませんので、ご心配なく。」
「ふん、当たり前だ。」
出来上がったコーヒーをカップに注ぐ。
「ま、飲め。」
砂糖もミルクも出されていない。そのまま飲めと言うことだろう。
「はい、ありがとうございます。」
一口、飲んでみた。
驚いた。
これがコーヒーと言うなら、今まで飲んでいたものはいったい何なんだ?
苦味よりも程よい酸味が前に出ていて、甘みさえ感じられる。
「・・・・うそでしょう?」
「今までお前が飲んできたやつがか?・・・・ほう、我ながらいいできだな。」
満足そうな表情でつぶやいた。
しばらく、無言でコーヒーを味わった。言葉にするのが憚られたから。
「このグラインダーは、ウォルフが持ってきたものでな。」
唐突にウッド教授が話し始めた。


ノックの音がした。
ドアは開いているので、わざわざノックする必要もないのだが、読書に没頭していた私の気を引きたかったのだろう。
足をデスクの横に伸ばし、リラックスして読んでいた本から顔を上げ、予定外の訪問客のほうを見た。
背の高いやせ気味の、薄いサングラスを掛けた男が立っていた。
年齢は、ちょっと判らない。意外と若いのかもしれないが落ち着いた雰囲気を持っている。
二十五より若いと言うことはないだろうが、四十近いと言われても意外ではない。それほど大きくない紙袋を携えていた。
「何の御用でしょう?ここの学生のようには見えませんが。」
多少警戒しつつ、丁寧に対応した。
「教授に見てもらいたいものがあるんで、持ってきたんだが、ちょっといいかね?」
男が紙袋を少し掲げながら部屋に入ってきた。
「授業に関係あるものですか?考古学は私の専門ではないのですがね。」
歴史を教えているせいか、ときどきこういうことがある。
十中八九、単なるガラクタだ。納屋でほこりをかぶっていたものを持ってこられたこともある。
大抵、学生たちの親なのでそう邪険にも扱えず、適当に鑑定まがいのことをして追い返している。
男が私のデスクの上の本や雑誌を空いているほうの手で、意外なほど注意深く横に移動させ、紙袋をデスクの上に置いた。
いい香りが漂っていた。とても慣れ親しんだ香り。
私が香りに気づいたことに気づいたのだろう、男は口元に楽しそうな笑みを浮かべ、紙袋から私に見せたいと言うものを取り
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