004 試験終了
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・スカウトする価値、あるのかな?」
「私から見れば、これはウォルフの最大限の賞賛に属するとは思います。」
「・・・どこが?」
狭い部屋だ。小声でつぶやいてもいやでも聞こえてしまう。
「“慣れたらこんなもんじゃなくなる”、といっているように聞こえませんか?」
ふーむと、腕を組んで考え込んでしまった。
「私の個人的な評価としては、なかなかのものだったの思っています。正直、独学でここまで作りこめる人はめったにいませんし・・・」
「?」
「あの、極限状況で作成したのです。あなたの才能は、本物か、本物に近いものでしょう。これが知りたくて、あの状況で無理をお願いしたのです。」
才能、か。・・・好きなこと、出来ること、やりたいこと、そんなこんなが皆同じものだったら、どんなに楽だろう・・・
「ふん、本当に俺の職業には興味がないんだな。」
クリスが肩をすくめた。「そういうわけでは、ないのです。ほんとうに。」
「あなたの恩師が言ってたわね。『歴史はじつに面白い。起こった事実を地理的にも、時間的にも、きわめて広い範囲で知ることが出来るからだ。どんどん積み重なっていって、止まるところを知らない。多くのものが学び、掘り下げ、さらに興味深いものにもしてくれている。だが、どれほど歴史を深く学ぼうとも、未来を予想できるようになるわけではない』と。」
「ああ、恩師の引退講演だな・・・」
恩師に会いたい。ふと思った。『船』に行ったら、もうお会いできる機会もなくなるな・・・。
「戦術予報は、ある意味、未来に関する学問よね。」
「戦術予報なんて、学問と呼べるか。戦争の道具だぞ。」
俺は純粋な、学問の徒なんだ。出来れば、戦争なんかとは関わりたくはなかった。・・・軍事オタクだけど。
「私は、歴史の先生をやっているお父さんもいいけど、必死で戦術予報を作っていたお父さんとすごくカッコいいと思ったよ。」
マティルダにしてみれば、父親の、見たことのない一面だったのだから、新鮮に感じただろう。
「そりゃ、もう、アメリアの命がかかっていると思ったからなぁ・・・必死だったよ。」
「・・・そうなの?」
小声で、娘に聞く。
「うん、すごく必死で、かっこよかった。“コーヒーはまだか”なんていいながら、私が持っていっても、結局最後まで手を付けなかったの。」
「あらあら。」
うれしそうに夫の顔を覗き込む。
「かっこよかったんだって、あなた。」
いつもはカッコよくないのか、などと場の雰囲気を壊すようなことはこの際言わないでおこう。
「わかったよ。・・・・クリス、ひとつ条件がある。条件なんぞ要求できる立場ではないだろうが・・・」
「なんでしょう?」
クリスに屈託はない。
「あいつの、ウォルフの戦術予報はすべて俺にやらせろ・・・・どうせあいつは戦術予報なんか無視してやっ
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