004 試験終了
[3/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れない。
もう一人はランだ。
肋骨の三本と左上腕骨にヒビが入っており、打撲、擦り傷は言わずもがな、だ。
加えて言うなら、今回の最終試験で大きな怪我を負ったのはランだけだ。
「最終的な総括は教官が帰ってきてからということになるわ。」
それぞれの顔を見回しながらクリス特別教官が言う。
ランがベットから降り、エムの隣に立つ。額の冷や汗が痛々しい。
「実戦とはいえ、あくまで試験。つまり教育的な意味合いが強かったということを覚えておいてください。」
無事に収容された安心感がどこかに吹っ飛び、緊張した雰囲気がすぐさま戻ってくる。
さすがに最終試験に選ばれる人材は、その辺のけじめはわかっている。無言で頷いた。
「あるものは予想通りの結果だったし、あるものは予想以上、予想以下だったものもいるけどね。」
ランが珍しく感情を表情に表した。が、懸命にも何も言わなかった。
「クリス特別教官。」
バルロスが半歩前に出る。
「そういった内容は、ナップが起きてから言ってくださったほうがよろしいかと。」
バルロスでなくとも、予想以上の結果を出して帰ってきたナップに、憧れのクリス特別教官の言葉を聞かせてやりたくなるだろう。
「ナップが?なぜ?」
意外にも、冷ややかに見つめ返す。
「彼だけよ、私の予想以下だったのは。」
皆の顔色が一斉に変わった。そんな、馬鹿な!
「あなた方も聞いたでしょう?私は彼に“本当は五日と言いたい所だけど”と言ったはずだわ。」
「そ、それは聞きましたが・・・」
「彼が私の言葉をどう捕らえたのかはわからない。また、ウォルフ教官からも何か言われたのでしょう。でも私もウォルフ教官も、この件に関しての五日と六日の違いを充分にわきまえての発言よ。彼には彼の考えがあり、私には私の考えがあった。そしてコレは私の評価よ。」
意外なほどの語気の強さに、バルロスはたじろいだ。これが伝説の特殊工作員の迫力だ。
「最終試験は、試験だけど実戦なの。」
先ほどとは間逆なことを言う。しかし、両方とも、現実なのだ。
「実戦は、大抵ほかの現場と連動しているわ。なぜこの場にウォルフ教官がいないのか?それは彼が五日でこの最終試験を終わらせられなかったから。教官に余計な仕事をさせておいて、“お帰りなさい、よくやったわ”なんて、私にはとても言えない。」
そうなのかもしれない。そういうことなんかもしれない。そうなのだろう・・・でも。
そこまで要求するのか。
この十八歳にもならない青年未満に、そこまで厳しい要求をしているのか。
「ウォルフ教官はナップが六日で終わらせても何とかなるように準備していたわ。だから六日でもいいぞ、とか何とか言って送り出したんだろうとは思うけど、でも“よくよく考えて行動しろ”という類のことは言ったはずよ。それが教育的側面のポイントだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ